日本売りの反動による円高リスク
2009年06月08日
2009年2月16日、日本の08年10-12月期実質GDPが前期比年率▲12.1%と発表されると、翌日から株安下の円安が始まった。言わば「日本売り」の円安は3月5日まで続き、その間にドルは91円台から99円台へ(9.0%)、ユーロは115円台から125円台へ(7.5%)、豪ドルは58円台から64円台へ(8.5%)、円安が進んだ。GDP統計発表直前の市場予想平均は▲11.7%程度と、すでに大幅なマイナスであったし、実績が予想から大きく下振れしたわけでもないのに、米国やユーロ圏などに比べて日本のマイナス成長幅が突出して大きいことを理由に、日本売りが発生したわけである。ならば、逆に日本のマイナス成長が解消することを理由に、日本売りの反動による円高が起きる可能性も否定はできないだろう。
09年1-3月期実質GDPは前期比年率▲15.2%と過去最大のマイナスを記録したが、4-6月期はプラス成長との予想が増えている。4月の鉱工業生産が上昇し、5-6月の生産も大幅に増える見通しとなったことや、4月の実質輸出が上昇したことなどが背景にある。ただし、4-6月期の成長率がどの程度の水準になるか、確定的となったわけではない。成長率予想が確度を高め、しかも明確なプラス成長の公算が高いということになれば、その段階で円買いを誘発する可能性もある。日本売りのときのように統計発表後に円買いが起きる可能性もあるが、いずれにせよ4-6月期GDPが発表される8月中旬前後に日本売りの反動による円高のリスクがあろう。日本の成長率が欧米を大きく上回ることになれば、なおさらだ。
では、すでにそうした日本売りの反動という意味での円買いは、進み始めていないのだろうか。為替相場は様々な要因で動くので、一つの要因の影響だけを取り出すことは難しいが、ここでは株価(リスク許容度)要因と金利差要因で為替相場を回帰分析し、その推計値と実績値との乖離をみることで、日本売りによる円安の大きさを判断することとしよう。株価(S&P500)と金利差(3ヶ月金利先物)で07年1月から09年2月17日までの回帰分析を行い、その係数を用いて延長すると、ドル円の実績は3月5日時点で推計値よりも7円ほどドル高に乖離していたが、現在も10円ほど乖離している。ユーロ円は17円ほどユーロ高に乖離していたものが、現在も20円ほど乖離し、豪ドル円は10円ほど豪ドル高に乖離していたものが、現在も12円ほど乖離している。つまりは、日本売りによって発生した円安方向の乖離は今も解消されておらず、今後に乖離が縮小する可能性を残している。
程度は一概には言えないものの、日本売りの反動によって夏頃に円高が進むリスクがあるだろう。ただし、それはあくまでも一時的なものと考えられる。基本的には株価や金利差に応じて為替相場は決まる。ドル円にはドル安(円高)リスクが引き続き残るものの、クロス円に関しては株高や金利差拡大を背景に円安トレンドを形成していくのではないか。
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