土地の転用規制は正しいか
2009年06月01日
土地の利用規制、特に、農地の利用規制を強化することが農業問題解決のための重要な施策だと考えている人が多いらしい。しかし、都市化によって、農地だったところにまで住宅が広がって来たら、農地を宅地に転用するのが当然のことではないか。
農地を宅地に転用したら、それまで農地として投資してきたことが無駄になるという批判があるが、それでは農地を宅地というより利用価値の高いものにすることで得られる利益を無駄にすることをどう考えるのだろうか。農地のために国が投資したお金が無駄になるというのであれば(私はむしろ国が誤った投資をしてきただけだと思うが)、転用者にその分を払わせれば良い。
そんなことをすれば日本全体が宅地になってしまい、農地がなくなり、食糧自給率がゼロになってしまうと心配するには及ばない。日本の人口は減少し、人々は都市に集まってきている。人々が都市に集中すれば、農地として使える土地は増えるはずだ。むしろ都市近郊の農地の転用が進まないことが、スプロール的な農地の宅地化を促しているのではないか。
土地の利用規制とは、政府が、都市の自然な発展をコントロールし、自然な発展よりも好ましい発展をもたらせるという考えが前提になっている。しかし、そんなことはできない。技術や人々の好みがどう変るか、誰も予測できないからだ。
バージニア・リー・バートンの『ちいさいおうち』(対象年齢 4.5歳以上と書いてある)という童話がある。元々は草原の中に建てられていた小さな家のまわりがビルだらけになってしまったので、小さな家はさらに郊外に引っ越して、お日様にも会えるようになって喜びましたという話だ。小さな家の周りの土地利用を規制するより、小さな家が引越しした方が良いという童話である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
メタバースは本当に幻滅期で終わったか?
リアル復権時代も大きい将来性、足元のデータや活用事例で再確認
2025年06月11日
-
議決権行使助言業者規制を明確化:英FRC
スチュワードシップ・コード改訂で助言業者向け条項を新設
2025年06月10日
-
上場後の高い成長を見据えたIPOの推進に求められるものとは
グロース市場改革の一環として、東証内のIPO連携会議で経営者向け情報発信を検討
2025年06月10日
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
「内巻」(破滅的競争)に巻き込まれる中国自動車業界
2025年06月11日