過熱感なき米国株上昇

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2009年05月27日

  • 成瀬 順也

米国株が急騰。NYダウは3月9日から5月8日にかけて、たったの2ヶ月で31%もの上昇を記録した。しかし、不思議なことがある。これだけの急騰を演じた割には、あまり過熱感が感じられないのである。というか、依然として投資家心理が冷え込んだままなのである。

例えば、個人投資家へのアンケート調査であるブル・ベア指数を見ると、5月20日までの一週間はブル(強気)派が33.7%に対し、ベア(弱気)派が45.4%。弱気派の方が断然多い。それも、株価急騰に対する警戒感から弱気派が増えた訳ではなく、ブル/ベアレシオ(強気派÷弱気派)が1年以上に渡って90年以降の平均値を下回っていることにも見られるように、ずっと盛り上がらないままなのである。ただし、逆説的だが、株価にとっては朗報かもしれない。これまで楽観的だった人達が悲観に転じたなら悪材料だが、悲観的だった人達が乗り遅れて悲観のままなら、却って好材料だろう。

ミューチャルファンド(オープンエンドの会社型投信)の動向を見ると、MMFに多額の資金が積み上がっている。足元では資金流出に転じたが、その分、資金の行き先となっているのは債券ファンドである。まだまだ個人投資家のリスク許容度は低い。かと思えば、ようやく流出から流入に転じた株式ファンドの内訳を見ると、米国株ファンドは流出入ゼロ近辺に戻っただけ。新興国ファンドが人気を集めていたりもする。米国株(欧州株も同様だが)の人気のなさが際立っていると言えよう。

また、株式ファンド内部の現金比率も高いままである。個人投資家のみならず、プロであるファンドマネージャーも慎重な姿勢を採り続けていることになる。つまり、MMFや株式ファンドの保有現金という形で、株式市場に流れ込むチャンスを窺う待機資金が膨れ上がっているのである。株式投信から大量の資金流出が起こったり、MMFに溜まった資金が個人の借金返済や消費支出に回ってしまってからでは遅いが、今なら急騰が急騰を生むスパイラルになりやすい。いったんこれらの資金が動き出すと、米国株の上昇は予想外に大きなものとなろう。

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