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社外取締役を義務付ける動き

2009年04月15日

藤島 裕三

1月18日付の日本経済新聞に、「上場企業の取締役会/社外役員を議長に」という見出しの記事が掲載された。金融庁金融審議会の分科会が翌19日に提示する論点の中に、「取締役会議長に企業から独立した立場にある人材を充てる」ことが含まれているという内容。社外取締役を議長にしている例は、ソニーやエーザイなどごく一部に限られており、「必要があれば金融商品取引法を改正する」の記述は驚きを以って受け止められた。

「取締役会議長に」の主張にはやや極端な感もあるが、社外取締役は委員会設置会社と共に、グローバルなコーポレートガバナンス論の象徴として、これまでも是非が問われてきた。もっとも業績との相関性が認められない、日本独自の監査役制度で十分などを論拠に、社外取締役の義務付けは見送られてきた。しかし近時は、上述の批判を所与のものとした上で、規制強化に道筋をつけるべく議論が進んでいるようにも見える。

図表はコーポレートガバナンスの在り方を討議する公的な検討会について、それぞれの議事要旨から社外取締役に関する議論を抽出したものである。経産省と金融庁においては、従来から繰り返されてきた消極論に対して、積極論が反駁して押し切ろうとしている構図に見える。基本的な観点として経産省は少数株主の保護、金融庁は資本市場の国際化を打ち出しており、何らかの規制強化に向けて方向性を出したいのではないか。

一方で東証に関しては、消極論に配慮した慎重なスタンスに思える。議論の中には「日本流のガバナンスもしっかり機能しているという有効性について発信していくことも必要」といった、旧来通りの主張も見られる。東証は4月中に報告書を出す予定だが、2004年の上場会社コーポレートガバナンス原則において「社外取締役」の文言が一切なかった(序文を除く)ことを鑑みて、今回どこまで踏み込めるのか注目されよう。

図表 各種検討会における社外取締役の議論

  消極論 積極論
経済産業省
企業統治研究会
第1回議事要旨
(2008/12/21)
  • 日本のガバナンスはいたずらに欧米に倣うべきではない
  • ガバナンスとパフォーマンスに相関関係を示すことは難しい
  • 社外取締役の人材が確保できない可能性がある
  • アジアなど欧米以外でも、社外者が重要という点は共通理解
  • 独立社外取締役はパフォーマンスの急激な悪化を防止するもの
  • 定年で辞めざるを得なかった人たちが、多数いるのではないか
金融庁金融審議会
分科会SG
第16回議事要旨
(2008/10/21)
  • ガバナンスが良いからといって業績が良いわけではない
  • 社外取締役が果たすべき機能を社外監査役に求める意見がある
  • エンロンなど、社外取締役がいても不正が発生する場合もある
  • ガバナンス不備で業績の良い企業があることは理由にならない
  • 取締役と監査役の役割は違うので、やはり社外取締役は重要
  • 国際的に見た場合、社外取締役がいると安心して投資しやすい
東証上場制度
整備懇談会
第14回議事要旨
(2008/3/18)
  • 海外投資家の意見だけを参考に議論をすると偏ったものになる
  • 日本の監査役設置会社の業績の方がよいということもある
  • 日本を熟知する機関投資家でも、監査役制度の理解が十分でない
  • 世界では社外取締役の選任が完全な常識である

(出所)各会の議事要旨よりDIR経営戦略研究所が作成

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