中国の富裕層 ようこそ日本へ
2009年03月31日
所得改善と規制緩和を背景に、中国人の海外渡航者数が急増している。2002年には、ようやく1,000万人という大台に達したが、2008年になると、その数は4,013万人に膨らんだ。世界観光機関(WTO)は2020年には中国からの海外旅行者数は年間1億人に達すると予想しており、中国人観光客という巨大な市場を獲得するため、世界各国が誘致体制の整備に本腰を入れ始めている。中国の団体観光客を受け入れている国・地域は2003年の34から現在の90前後に増えた。香港や東南アジアのみでなく、欧米を訪れる中国人観光客も増えている。
日本は、2005年7月に中国全土を対象に団体旅行ビザの発行を解禁した。これを受け、日本を訪れる中国人観光客は急増し、08年には100万人を突破した。しかし、これは、香港が受け入れた中国人観光客の6%に過ぎない。移動距離や言語などから考えれば、中国人にとって一番行きやすい「海外」という「地の利」を有する香港とは単純に比較できないが、個人観光の解禁が実現しているかどうかも一因ではないかと考えられる。
2003年夏ごろから、香港政府は中国本土からの観光客受け入れを拡大し、同年7月から、広東省の4都市を限定に「自由行」と呼ばれる個人旅行を解禁した。その後、その範囲をどんどん拡大し、現時点では、32都市、合計1.5億人が対象となっている。香港の関係者によると、団体客に比べ、個人観光客は(1)リピーターが多い、(2)購買力が高い、(3)犯罪率が低いなど、個人観光解禁のメリットを取り上げている。
一方、日本は08年3月、家族向け(2人以上)の観光ビザの発給も始めた。しかし、日中双方から1人ずつ添乗員が同行する条件が求められ、利便性とコストの悪さから、この制度を利用する観光客があまり増えなかった。世界金融・経済危機の影響で日本を訪れる海外観光客が大幅減となっているのを受け、日本政府は、中国の個人に観光ビザを発給する方針を決めた。具体的には、(1)09年7月1日から北京、上海、広州を対象に1年間試行した後、中国全土に広げる予定、(2)対象は年収25万元(約350万円)以上の富裕層に限定し、銀行の預金証明などで審査するなどが盛り込まれている。
2008年末時点、この三都市の居住人口は北京市が1695万人、上海市が1,889万人、広州市が1,018万人。2008年の1人当たりGDPは、全国が3,330米ドルであるのに対し、上海が10,611米ドル、北京が9,075米ドル、広州が11,781米ドルと、全国平均を遥かに上回り、富裕層が最も多い三大都市として知られている。総人口のなかで富裕層(年収25万元)がどれくらいの規模なのか把握できないが、観光立国を目指す日本にとっては、この4,600万人が力強い援軍になるのが確かであろう。人民元高や上海万博の開催などを追い風に、中国人の海外旅行ブームが本格的に拡大すると見込まれる中、今回の規制緩和に伴い、中国で高まりつつある訪日ブームに一層弾みをつける効果が期待できる。
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