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CDSのデフォルト事由とCDO

2009年03月24日

片瀬 恵次郎

CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)において契約上の保証が実行されるデフォルト事由を見てみる。通常の債務保証とCDSの大きな違いは保証する債務が特定されているか否かである。債務保証では当該債務に対して不履行が生じた場合に保証が実行され、それと交換に債務者に対する求償権が引き継がれる。
一方CDSでは保証の対象としての債務が特定されていない、このため概念上の債務不履行を定義する必要がある。また保証の実行と交換に引き継ぐものも決めておく必要がある。

企業が債務不履行に陥る前にはメインバンク等により金利減免や債権放棄というような債務の軽減策がとられる、しかしこれらを理由に債務保証が実行されることはない。
一方、CDSは保証の対象が特定の債務ではないので、保証実行の事由であるデフォルト等の定義はより広く、金利減免や債権放棄などの債務の組み替え、破産や倒産、支払い遅延および債務不履行などが含まれる。つまり、CDSは通常の債務保証より早い段階でデフォルトと認定される。
次に債務者に対する求償権に相当するものであるが当該企業の社債や一般債権のほか、設定した弁済率に相当する金銭とすることもできる。店頭で取引されるCDSの大半はプロトタイプであるとしても、CDSは相対契約なので、契約毎にデフォルト事由や求償権に相当するものを変えることが可能であり、同じ企業に対するCDSであっても契約で内容を大きく変えることができる。
アメリカ政府の管理下におかれた住宅金融専門会社ファニーメイを対象にしたCDSを考える。デフォルト事由に公的支援ならびにそれに類する事項が入っていれば、このCDSはデフォルトに該当する、このとき保証実行の見返りにファニーメイ債あるいはファニーメイに対する債権が引き渡される契約であればこのCDSを引き受けたものはほとんど損をしない。(清算による損失は8.5%程度となったもよう。)しかし、もし契約でみなし弁済率を30%とし金銭で処理するとしていれば、保証の実行の見返りは30%の金銭であり、契約金額の70%の損失が発生する。一般に倒産企業の弁済率は20%~40%程度とされているので、このような設定は必ずしも無理がない。CDSは特定の債務に対する保証ではないので契約内容に大きく依存することになる。

次に今回の金融危機の一因となった商品CDO(債務担保証券)を見てみよう。
通常CDOは債券やローンを担保に組成されるが、債券やローンの代わりにCDSを組み込んだCDOをシンセティックCDOと呼んでいる。
シンセティックCDOは次の図とおりである、まず投資家の資金はSPCに払い込まれる、SPCはその資金で国債を購入するとともにA社のCDSを売る。(債務保証を引き受け、保証料を得る。)投資家にはSPCが発行した社債(国債のクーポンとCDSの保証料が利息として支払われる。)が渡される。この社債はほとんどA社の社債と同じようなペイオフを持っているので特にA社の擬似社債とも呼ばれる。

シンセティックCDO

一般的にシンセティックCDOは複数のCDSが組み込まれている。

さて20社のCDSが組み込まれているシンセティックCDOのオファーがあった場合、投資家として組み込まれた個々のCDSの契約内容を正確に知ることはできるだろうか?できたとしても非常に難しいだろう。投資家はCDSを売ったポジションを持っているが、CDSを直接契約したわけではないためである。一方SPCの組成者にとって契約内容の設定しだいで投資家に見栄えのよい商品を作るのは比較的容易と考えられる。これは、商品組成者はリスクの所在を明確に把握しているが、投資家はリスクの所在を明確に理解できていないことを意味する。
さらにシンセティックCDOから切り出された第二段のCDO(CDO2 CDOスクウェアという。)も作り出されている。このCDO2の原資産であるCDSの条件の特定はずっと難しくなる。こうしてみてくるとCDSやCDOの問題点として、商品供給者と投資家の間の情報の非対称性ということもありそうである。

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