金融危機と資産デフレ

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2009年03月19日

  • 木村 浩一

2008年9月に起きたリーマン・ブラザーズ破綻以降の迷走するアメリカの対応と世界的な金融危機は、1997年11月の三洋証券、山一証券、北海道拓殖銀行の経営破綻に端を発した日本の金融危機と相似形を見る思いがする。リーマン・ブラザーズ破綻以前は、日本の「失われた10年」の二の舞にはならないと豪語していた欧米の金融当局も、グローバル規模の金融危機の拡がりの大きさと実体経済の失速のスピードのあまりの速さに、対応の困難さに直面している。

昨年の9月から10月にかけて、欧米主要行に対し公的資金が投入されたが、その後もシティーグループ、バンク・オブ・アメリカ、AIGへの追加資本注入に追い込まれ、主要行の国有化も想定されるなど、金融危機対応は混迷を極めている。

日本の「失われた10年」は、(1)金融機関の不良債権のディスクロージャーへの不信と損失処理の先送り、(2)不良債権のオフバランス化の遅れ、(3)公的資金注入の遅れ、がその原因だが、金融危機への対応に長期間かけてしまったことにより、不動産の地価(東京圏商業地)がピーク比5分の1、株式時価総額が3分の1まで下落した資産デフレが、我が国の金融危機を深刻なものとさせてしまった。

アメリカもヨーロッパも、不動産相場の底打ちが遠のく中で、銀行の毀損した資本は底なしの様相を強めている。金融機関の抱える損失についての推計額は、日を経るにつれて増え、1月にIMFが発表した推計では2兆ドルを超えている。金融危機と資産デフレは連動しており、アメリカは、資産デフレが進行しローンが劣化する前に、銀行の損失額の確定と不良債権の分離、経営困難な銀行の破綻処理、国有化を速やかに実行しないと、日本の「失われた10年」の二の舞になるだろう。金融危機対応は、資産デフレの進行との時間競争になっている。

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