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国際会計基準の導入に向けて

2009年01月14日

吉井 一洋

2009年は、わが国にとって、国際会計基準の導入に向けた大きな動きのある年となりそうである。

昨年11月に米国のSECは、国際会計基準の米国企業への導入に向けたロードマップを公表した。これによれば、米国のSECは、2009年度からは一定の上場企業(110社程度)に国際会計基準の適用を認め、2014年から上場企業等全体に段階的に強制適用していく、ただし、強制適用するか否かの判断は2011年に行なうこととされている。一方、EUは既に、条件付ではあるが、2005年からEU域内の上場企業の連結財務諸表に国際会計基準を強制適用している。その他、オーストラリアは既に国際会計基準の適用を強制しており、カナダ、韓国、インドなども国際会計基準の適用を2011年から強制する予定と伝えられている。

一方、わが国では、日本基準をEUが適用している国際会計基準と同等と認めてもらうため、日本基準と国際会計基準のコンバージェンスを進めてきた。「コンバージェンス」とは、会計基準の相違をお互いの国・地域の投資家等が受入れ可能なレベルまで縮小することをいう。これに対して、米国を始めとする昨今の各国の動きは、国際会計基準をそのまま自国の会計基準として受けいれていく「アダプション」を目指している。
わが国の会計基準は、2008年にEUに、EU版の国際会計基準と同等であると認められた。現在は、2011年を目途に、EUとの間で問題となった項目以外について、ASBJ(企業会計基準委員会)が国際会計基準とのコンバージェンスを進めているところである。しかし、諸外国、特に米国の動きを受け、わが国でも、コンバージェンスに留まらず、国際会計基準のアダプションに向かうべきではないかという意見が強くなってきている。そこで、金融庁は2008年10月から企業会計審議会の企画調整部会を開催し、国際会計基準への対応について議論している。早ければ、今月(2009年1月)末にも、国際会計基準のアダプションに向けたロードマップが公表される可能性もある。

国際会計基準の導入に当たっては、国内の執行体制の整備、国際会計基準に精通した人員の確保などの他に、国際会計基準を設定するIASB(国際会計基準審議会)のガバナンスも課題として挙げられている。昨年末、IASBは、EUの(特に金融機関の)要請に応じ、公開草案の公表などを行なわないまま、時価会計を緩和した。このような特定の地域の特定の業種の要望に応じ、正規の手続きを経ずに会計基準を見直すような行為は、国際会計基準の信頼性を大きく低下させる。このようなことが再び行なわれることのないよう、わが国も国際会計基準の設定プロセスを監視・関与していく必要があり、またそのようなことが可能となるような体制整備をIASBに求めていく必要がある。

また、わが国の会計基準は会社法や税法の制約がある。そこで、国際会計基準の導入は、そのような制約がより緩やかな連結財務諸表から先行して(あるいは連結財務諸表にのみ)行なわれることが想定されている。連結財務諸表に国際会計基準を導入する際には、作成者側からは個別財務諸表の簡素化を求められることになると思われるが、その際には、現在は個別財務諸表でのみ開示されており、連結財務諸表では開示されていない情報が、個別財務諸表の簡素化に伴い開示されなくなることのないよう注意が必要である。例えば、製造原価や売上原価の明細は、個別財務諸表では開示されており、連結財務諸表では開示されていないが、これらのデータは、アナリストが限界利益を推計し利益予想を行なう上で、重要な手がかりとなる情報である。このような情報が、国際会計基準の導入をきっかけに開示されなくなったのでは、利用者にとっては大幅な開示の後退となる。むしろ、これら重要性の高い情報は、連結財務諸表においても開示を求めていく方向で検討されることが望まれるところである。

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