羊羹(ようかん)が売れると株価は上がる
2008年12月30日
羊羹(ようかん)は古くは高価なお菓子であった。贅沢品というのだけではなく夏目漱石は著書の『草枕』で「玉と蝋石 (ろうせき) の雑種のよう」で美術品にまで持ち上げられた。今も贈り物に羊羹が使われる。高級な羊羹をもらうと「今回は随分と気を遣ってくれたようだ」などと思うだろうし、反対に羊羹を贈る側も感謝の気持ちを表すのに高級羊羹を使うこともある。こうしたことを考えれば景気が良く、人々の気持ちに余裕がある時には羊羹の売れ行きも良くなるのではないか?株価にも連動するのではないか?
そこで羊羹の売れ行きと株価の関係を調べた。具体的には二人以上の世帯(農林漁家世帯を除く)の「羊羹」の支出金額と日経平均との関係を見たのだ。羊羹の支出金額は、総務省統計局が発表している「家計調査」の中から、「都市階級・地方・都道府県庁所在市別1世帯当たりの支出金額:二人以上の世帯(農林漁家世帯を除く)」より取得した。月次のデータだ。
こうして調べたところ羊羹と株価には強い関係があった。羊羹の売れ行きと日経平均の相関係数が0.66となったのだ。石村貞夫著『すぐわかる統計解析』によると、この値は「かなり相関がある」にあたる。羊羹が売れると株価が上がる関係だ。
もう少しデータを解説しよう。先ず羊羹の支出金額には季節性がある。お歳暮や、お中元の時期に特に売れ行きが良い。また夏は水羊羹が売れて、冬は普通の羊羹が売れると見られる。夏に冷たい水羊羹を食べて涼むのは気持ちが良いだろう。冬はこってりとした羊羹が食べたくなる人も少なくないだろう。こうした季節性を除くため12カ月の移動平均を計算した。過去1年間の平均的な羊羹の売れ行きを見たのだ。これに対応して日経平均も12カ月移動平均を計算した。そして、これらの2つのグラフは強く連動していたのだ。羊羹の売れ行きが良いと株価が上がるという関係だ。
周りに贈り物で羊羹を買う人が増えたり、贈り物に羊羹をもらうことが多くなったり、美味しい羊羹を食べる人が増えたり、そして自分も羊羹を買ったりする機会が増えたら、株価は期待できるかもしれない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
メタバースは本当に幻滅期で終わったか?
リアル復権時代も大きい将来性、足元のデータや活用事例で再確認
2025年06月11日
-
議決権行使助言業者規制を明確化:英FRC
スチュワードシップ・コード改訂で助言業者向け条項を新設
2025年06月10日
-
上場後の高い成長を見据えたIPOの推進に求められるものとは
グロース市場改革の一環として、東証内のIPO連携会議で経営者向け情報発信を検討
2025年06月10日
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
「内巻」(破滅的競争)に巻き込まれる中国自動車業界
2025年06月11日