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クラウドコンピューティングの信頼関係

2008年12月24日

小原 誠

クラウドコンピューティングが注目されている。これは「あたかも雲の中にサーバーやソフトウェアがあるように、ITの物理構成を意識することなくITサービスを利用する」コンセプトである。Googleやアマゾンでは既にサービスが開始されており、ストレージやビジネスアプリケーションなどのITサービスを誰でも利用できる。

クラウドコンピューティングは、技術革新の方向からは当然の帰結とされている。水や電気の供給が良く引き合いに出されるが、かつては企業や工場毎で、井戸や発電機を所有していた。しかし今では、水や電気は浄水場や発電所から集中して供給され、誰もその内部構成を意識せずに利用している。ITサービスもそのような供給形態になるという説明である。そうなれば、世界は5つの巨大なクラウドデータセンターに集約されるという説もある。

では、すぐに企業のITサービスがクラウドコンピューティングに置き換わるかというと、答えはそう簡単ではない。電気にしても、発電所からの供給が主流になるまでには、電圧規格の標準化や送電線の整備など、多くの課題を解決する必要があった。ITサービスではWebがスタンダードに位置づけられるが、企業のITサービスをWebで再構成するには、多額の投資が必要になる。何より重要なのは信頼関係である。Googleやアマゾンのクラウドコンピューティングのサービスレベルは、残念ながらまだ企業のITサービスのサービスレベルに及ばない。

クラウドコンピューティングが信頼されるまでには、時間が必要である。しかし考えてみれば、私たちは浄水場や発電所を信頼していても、飲料用には水道水ではなくミネラルウォーターを嗜好していたり、海外の工場では停電に備えて自家発電装置を設置していたりもする。企業のITサービスも、必要とされるサービスレベルに合わせた最適化が行われるだろう。今後の企業のITサービスは、プレミアムサービスの要求と、クラウドコンピューティングの利用を組み合わせた、多様な形態に移行するように思える。

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