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情報開示体制が問われる「課徴金制度の強化」

2008年12月17日

金融調査部 主任研究員 横山 淳

「金融商品取引法等の一部を改正する法律」が、「ファイアーウォール規制の見直し」に関する部分を除き、2008年12月12日に施行された。その主なポイントは次のようにまとめることができるだろう(「ファイアーウォール規制の見直し」は除く)。

(1)いわゆるプロ向け市場の創設
(2)ETFの多様化
(3)課徴金制度の強化
(4)金融商品取引所による排出権取引市場開設の解禁

いずれも重要な改正ではあるが、今回は「(3)課徴金制度の強化」のうち、あまり取り上げられないが極めて影響が大きいと考えられる点について紹介したい。

今回の改正に伴う課徴金制度の強化の内容としては、違反行為に対して課される課徴金の額が重たくなるという点が、メディアなどを通じてよく紹介されている。例えば、インサイダー取引規制に対する課徴金の場合、算定基準となる価格が、従来の重要事実等が公表された翌日終値から、公表後2週間の最高値又は最低値に変更される。金融庁では、こうした見直しが行われることで、インサイダー取引に対する課徴金の水準は現行のおおむね2倍程度に引き上げられると試算している。

しかし、今回の改正に伴う課徴金の強化はこれにとどまるものではない。例えば、開示書類の「不提出」も新たに課徴金の対象となっている。これまでも有価証券報告書などの「虚偽記載」は課徴金の対象となっていた。最近も有名企業に対して「虚偽記載」により十数億円もの課徴金が課された事例がある。今後は、このような虚偽の内容の開示書類を提出した場合だけでなく、開示書類を提出しない場合も課徴金が課されることとなる。対象となる開示書類も、有価証券報告書や四半期報告書はもちろん、臨時報告書や大量保有報告書なども対象とされている。特に、課徴金制度は、機動的な適用を図るため、画一的かつ形式的な運用がなされる。その結果、悪質な情報隠蔽だけではなく、うっかり提出し忘れたようなケースも基本的に課徴金の適用対象となるという点に留意が必要であろう。

その他にも、課徴金の加算・減算制度が設けられている。これは、技術的な改正事項であるため、紹介される機会も少ないが、概ね次のような内容である。

(1)5年以内に違反を繰り返した再犯者は課徴金を5割増に加算する。
(2)(a)発行者による開示書類等の虚偽記載、(b)大量保有報告書等の不提出、(c)インサイダー取引規制に抵触する自己株式取得等については、当局による調査前に自首した者は課徴金を半額に減額する。

「なんだ、たかだか5割増と半額か」という印象を持たれる方もあるかもしれない。確かに、課徴金の金額が懲罰的に何倍にも跳ね上がる訳でもなければ、自首を促すために免除される訳でもない。その意味では、直接的な金額負担の影響は限定的かもしれない。しかし、この制度で最も留意すべき点は、「再犯者」(又は「常習者」)、「自首」というレッテルが貼られることで、「法令遵守意識の欠如」、「自浄作用の機能」といったイメージが広がる可能性が高いことである。そうなれば、(金額以上に)レピュテーションに対して無視できない影響が生じることは容易に予想できるだろう。

これらの点を踏まえ、発行会社も運用会社などの投資家も自らの情報開示体制を再確認し、適切な対応を進める必要があると言えるだろう。

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執筆者紹介
金融調査部
主任研究員 横山 淳