金融危機後の世界

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2008年12月15日

  • 木村 浩一

サブプライムローン問題を契機とした金融危機は、震源地のアメリカのみならず、先進国、特にヨーロッパの金融市場にも大きな衝撃を与えた。更に、EU非加盟のヨーロッパ諸国や新興国の金融市場、株式市場にも影響が及び、世界的な金融危機の様相を呈している。

今回の金融危機は、金融市場のグローバル化が急展開する中で起き、サブプライムローン問題の影響が発信地のアメリカにとどまらず、ヨーロッパ諸国や新興国にも大きな影響を及ぼしたことから、国際的な金融規制の見直しが不可避となっている。特に、銀行は、自行の株価下落の中で自ら資本調達できず、公的資金の注入を受ける銀行が多かったことから、相当厳しい規制強化が行われるだろう。

日本の金融機関は、1980年代のバブル崩壊後、合併・統合、メガバンク化が進んだ。1980年代まで、都市銀行13行、長信銀3行、信託銀行7行、合計23行のマネーセンターバンクが我が国にあったが、1997年以降の北海道拓殖銀行、長銀、日債銀の破綻、2000年から2002年にかけて金融危機に後押しされる形で合併(金融持株会社の導入もあり)が急速に進み、現在、8グループに集約されている。

欧米の主要銀行は、現在は政府による救済策を受けている段階だが、今後、邦銀のように、資本力強化のため世界規模で金融機関同士の合併、メガバンク化が進んでいくだろう。現在でこそサバイバル競争の中であえいでいるものの、1990年代初め、南米危機で経営困難に直面したシティバンクがジョン・リードの経営手腕により不死鳥のごとく甦ったように、よりグローバル化、巨大化し、洗練されて復活してくるだろう。

金融危機に襲われた欧米の金融機関と比べ、邦銀の受けたダメージは小さかったものの、今後、日本経済は、人口の減少、高齢化により生産人口が減少し、経済規模の相対的縮小が進み、金融機関の国内融資の拡大は難しくなっていく。邦銀は、海外へ資金運用先を拡大していかざるをえなくなるだろう。

その時、収益力、人材にまさり、統合により巨大化して資本力も強化された欧米の銀行に邦銀は太刀打ちできるのだろうか。邦銀に猶予されている時間はそう長くはない。

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