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サルコジ、ブラウン、メルケル:危機対応で明暗?

2008年12月09日

経済調査部 経済調査部長 山崎 加津子

「危機はチャンス」でもある。危機的な状況からの活路を見出してこそ、次への飛躍が可能となる。昨今の金融危機と経済危機をチャンスとし、支持率の急回復を実現させたのが、フランスのサルコジ大統領とイギリスのブラウン首相である。

二人はほぼ同時期に政権のリーダーとなった。サルコジ氏は07年5月の大統領選挙で「フランスの再生」を掲げて圧勝。35時間労働の見直しを筆頭に、構造改革に取り組むことを約束した。一方、ブラウン氏は3期目の途中だったブレア前首相から07年6月に政権を委譲された。首相就任直後にイラクからのイギリス軍撤退方針を決定。米ブッシュ大統領追随を批判された前任者との違いを明確にすることで労働党の支持率を回復させ、野党の保守党との差を10%に拡大させた。しかし、高支持率は長くは続かず、イギリスでは07年10月との観測があった総選挙をブラウン首相が先送りして以降、労働党は保守党に支持率を逆転された。また、就任1年目のサルコジ大統領の評価は「尊大、傲慢」と散々で、話題はもっぱら再婚相手の人気歌手カーラ・ブルーニのファーストレディぶり。08年3月の地方選挙で大苦戦することとなった。

ところが今年9月以降、金融機関救済や景気刺激策など政府の役割が非常に重要になる中で、両氏は従来の「決断力がない、行動力がない」との批判を覆すことに成功した。サルコジ大統領は08年後半にたまたまEUの議長国であったこともあり、EUレベルでの危機対策を主導。09年上半期には議長国はチェコに移るが、そこでもサルコジ大統領にイニシアティブをとってほしいとの声すら上がっている。ブラウン首相は欧州内でいち早く金融機関救済策、財政刺激策を発表。労働党の支持率は08年春から夏に20%pt前後の差をつけられていた保守党に、再び肩を並べるようになった。

この二人を「明」とすると、「暗」となりそうなのがドイツのメルケル首相である。ドイツ初の女性首相であるメルケル首相は、05年11月の就任当初は頼りない、実行力に乏しいと懸念されていたが、手堅い政権運営で支持率は徐々に上昇。ドイツでもっとも人気の高い政治家となっていた。ただ、今回の金融危機・経済危機への対策を巡っては、メルケル首相への批判が表面化しつつある。ドイツでは11月初めに自動車購入奨励、インフラ投資拡大等を盛り込んだ景気対策が発表されたあと、追加景気対策として与野党双方の議員から減税要求が高まっている。しかし、メルケル首相は景気対策としての減税には否定的で、なおかつ第一弾の景気対策の効果も見極めてから、追加策を決定する方針のようで、その時期は「来年になってから」と報じられている。現在、俎上にある対策は、所得税や付加価値税(VAT)の減税、商品券の配布、自動車産業等への補助金支給などさまざまである。ここで重要なのはどの対策を採るかということに加え、どれだけ迅速に決断を下せるかということである。「危機をチャンス」に変えないと、来年9月に迫っているドイツ総選挙において、安泰と思われていたメルケル首相の続投が危うくなるだろう。

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