欧州の意思も大きく反映されるIOSCOテクニカル委員会の3作業部会の活動
2008年12月02日
証券監督者国際機構(IOSCO)のテクニカル委員会が三つの作業部会で、作業を開始すると発表した。IOSCOの三つの作業部会は、11月15日に第一回が開催された、G20の金融サミットを支援するため、各作業部会で、次の三つの作業を開始すると発表したのである。
◆ショート・セリング
◆規制されていない金融市場と金融商品
◆規制されていない金融機関
テクニカル委員会のテレカンファレンスは、米国SECのコックス委員長により招集されたため、発表されたニュース・リリースは米国SECが作成した。これによれば、各作業部会はそれぞれ次のような作業を行うと説明している。(以下の3項目の説明は、米国SECのウェブサイトから引用した)
(出所) 米国SECホームページ
○ショート・セリング
作業部会はネイキッド・ショート・セリングに関する様々な規制手法における規制間のギャップを解消する作業を行う。これにはディリバリー(受け渡し)に関する要求、ショート・ポジションの開示も含まれる。これに関連して、作業部会は資本形成と市場のボラティリティ軽減のために重要な、合法的な証券貸付、ヘッジング、及びその他の取引への、マイナスのインパクトを如何にして最小化するかも検討する。作業部会の議長は、香港証券先物委員会が務める。
○規制されていない金融市場と金融商品
規制されていない金融市場と金融商品がグローバルな資本市場にもたらす影響力に鑑みて、当作業部会は、規制されていない市場分野に対して、より高い透明性と監視とを導入する方法を検討する。店頭デリバティブ市場、及びその他の仕組み金融商品市場が対象となる。当作業部会はオーストラリア証券投資委員会とフランス金融市場庁とが、共同で議長を務める。
○規制されていない金融機関
当作業部会は、ヘッジ・ファンドのような、規制されていない機関を巡る問題点を検討する。その取引に関する、かつ伝統的な不透明性にかかるリスクを緩和するために、推奨される規制アプローチの検討も含む。当作業部会はイタリアの規制当局CONSOBと、英国のFSAとが共同議長をつとめる。
以上のような形で、IOSCOのテクニカル委員会の作業は進められるわけだが、一つ注意しなければならないのは、従来ならば米国がいったん主導権を握ったら、そのまま最後まで握り続ける場合もあったが、今回はあくまで各作業部会の委員長らの指示により、自主的に運営が行われるということである。従って、たとえば『規制されていない金融機関』におけるヘッジ・ファンドのように、本来、米国は規制に消極的であったテーマにも、積極的に踏み込んでいっている面があることである。
各作業部会は2009年2月に開催される、次回のテクニカル委員会会議、及び、2009年春に開催されるG-20サミットにおいて、報告書を提出することになっている。
金融危機がもともと『米国発』だったことに鑑みて、EUなど米国以外の国々の主張を取り込みやすい形に、会議体がデザインされているのである。
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