中国:世界最大規模の景気対策

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2008年11月18日

  • 牧野 正俊

中国政府は11月9日、2007年の名目GDPの16%に相当する4兆人民元の景気対策を打ち出した。その後、先週金曜日に行われた記者会見で、今後2年間で中央政府が支出するのは1.18兆人民元にとどまり、残りの約2.8兆人民元は地方政府や銀行などが支援する、ということが明らかになったため、当初のインパクトがややトーンダウンしてしまった感があるが、それでも、急速な景気鈍化に見舞われている中国経済の下支え効果は少なくないだろう。

実際、北京オリンピック前後から、中国の景気拡大ペースの鈍化が顕著になっている。国内の自動車販売台数は8月、9月と前年割れを記録、10月にはやや持ち直したものの前年比3.4%増にとどまった。デパートの売り上げは、9月の前年比19.2%増から10月には9.6%増まで急減速。10月の電力消費も3%減と落ち込み、今年は伸び率がGDPのそれを下回る可能性が高い。2002年以来前年比で2桁の伸び率を続けてきた鉱工業生産も10月には8.2%増と一桁台まで低下した。

雇用確保のために8%成長が必要とされる中国では、金融緩和だけでは景気浮揚効果としては不十分で、大幅な財政出動を余儀なくされたわけである。先進諸国がリセッションに突入する中、中国の輸出がスローダウンするのは避けられず、総需要の7割以上を占める内需拡大が鍵となる。

今回の景気対策では、特に鉄道、高速道路、空港、農村部門などのインフラ整備に重点が置かれている。そもそも、必要なインフラが絶対的に不足している中国にとって、農村部や内陸部におけるインフラ整備は格差是正にもつながるため、足元の景気対策としてのみならず、中期的にも歓迎すべき投資であろう。

また、インフレ懸念が低下したことも中国にとっては追い風である。国内では農産物の買い上げ価格から石油製品にいたるまで、政府の管理下に置かれている。このため、原材料費などのコスト上昇が、農民所得や企業マージンを圧迫していた。これらの価格統制の緩和や引き上げ策により、消費や企業設備投資の拡大も期待できるだろう。

今回の財政対策は当然、中国の景気失速を回避するためのものであるが、週末の金融サミット前に、表面的には世界最大規模の財政政策を発表したことにより、「各国と歩調を合わせた財政出動で、世界的リセッションを防ぐべく、最大限の貢献をしている中国」を世界にアピールすることに成功した。中国は自らの存在感を着実に高めている。

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