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見栄でも良くなる

2008年11月04日

原田 泰

中国の西安と漢中を訪問した。西安とは昔の長安で、漢中は劉邦がここを拠点に項羽を破り、漢を打ち立てたところだ。三国志にも登場する気候温暖、物産豊富で、要害の地でもある。西安は今も大都会だが、漢中は小さな街である。もっとも、漢中全体の人口は四百万人近くなのだから、都市への集中が進んでいないということなのだろう。西安から漢中までの260キロメートルの高速道路が開通したばかりだった。3000メートルを超す山々が連なっている秦嶺山脈にトンネルを掘って作った高速道路だ。中国の人が、日本は平方メートルずつ道を作るが、中国は平方キロメートルずつ道を作ると言ったが、確かにその通りだ。

ただし、道路はできたが、車は走っていない。ときおりトラックが走るだけで、自家用車は走っていない。漢中には自家用車がほとんどなかったから、当然、高速道路にも車が走らない訳だ。この高速道路が過大投資なのか、先見の明ある投資なのかは分からない。しかし、北京ですら20年前には自転車が主流だった。漢中でも、将来、北京のように車が普及すれば、高速道路を自家用車が疾走することになるだろう。

高速道路から見える農村の家々が立派なのに驚いた。黒い瓦屋根、レンガ造りの家に真っ白な漆喰が塗ってあり、緑の中で美しい。良く言われる中国の貧しい農村のイメージはまったくない。和階社会、小康社会とはこういうものだろうと思った。

中国の人によると、道路から見える家は立派にしたのだという。道路から見えない奥には、貧しい農村が広がっているのかもしれない。しかし、日本の国土交通省が、道路から見える家々を美しくしようと考えたことはないだろう。見栄でもいいから、農村を美しくし、自然を保護し、環境を保全し、労働保護行政を行い、人権を保護し、自由を擁護すれば、中国は素晴らしくなるだろう。

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