株価対策に「401k」の活用を

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2008年10月31日

株価の大幅な下落に伴い、政府は様々な対策を検討している。空売り規制、証券優遇税制の3年延長、銀行等保有株式取得機構による銀行保有株の買い取り再開、従業員持ち株会による自社株買いのルールの緩和、などである。確かに、即効性のある株価対策が求められているのが現状である。しかし、短期的な対策のみならず、株価下落を逆にチャンスと捉えた長期的な対策も、併せて実施して行くべきだと考える。

そもそも、今回の株価下落の震源となったサブプライムローン問題は、アメリカやヨーロッパの方が影響が大きく、日本は相対的にダメージは浅いと思われる。にもかかわらず、株価の下落率については日本の方が今までのところ大きい。要因はいろいろとあるとは思われるが、1つにはやはり国内投資家の層の薄さがあるのであろう。東京証券取引所での売買シェアにおいても、外国人が半分以上を占めると言われて久しいが、裏を返せば国内投資家の存在感の薄さを表している。資本主義国家として持続可能な経済発展を遂げていくためには、やはり長期的な視野に基づいて国内投資家を育成して行くべきであろう。

では国内でどの主体が株式を保有するのが望ましいのであろうか。歴史的には、日本は戦後、銀行を中心とした金融機関が株式を大量に保有してきた。しかし、銀行の株式保有については以前から様々な弊害が指摘され、また、現実的にも保有株の売却が進められてきた。政策的にこれ以上、金融機関に株式の保有を期待するのは難しいかもしれない。また、一般企業に株式保有を求めるのも、同様に容易ではないと思われる。結果として、株式投資という形態を取るか、投資信託という形態を取るかは別として、やはり「個人」に株式を長期保有してもらうしかないというのが個人的な感想である。

確かに、株式投資はリスクを伴う。しかし、今の株価水準から長期投資を始め、「株式」や「投資信託」の個人金融資産に占める保有比率が徐々に高まって行くのであれば、投資リスクも限定的となるのではないだろうか。

具体的には、「日本版401k」(確定拠出型年金)の制度見直しを提言したい。「日本版401k」は、2001年にスタートした制度で、当初はこの制度導入をきっかけに、個人金融資産が証券市場へと徐々に流入するのでは、と大いに期待された。しかし、現実には、掛け金の非課税上限額が低く抑えられてしまった。また企業型に関しては、企業拠出のみで、米国の制度には存在する個人拠出(マッチング拠出)が認められなかった。このようなこともあり、盛り上がった機運は急速に萎み、ここ6年間ほどはマスコミなどでも取り上げられる機会が減ってしまっているのが現状である。

「掛金の非課税上限額の引き上げ」と「個人拠出(マッチング拠出)の一定水準の解禁」。この2点を早期に実施することによって、「日本版401k」で、もう一度個人投資家を育成して行くことが必要であると考える。

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