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これからの年金制度のありかた

2008年10月06日

川岡 和也

9月29日の社会保障審議会年金部会に厚生労働省が公的年金の改革案を提示した。年金制度に関する議論は盛んで国民の関心も非常に高い。これからの日本の年金制度は、どのような方向に進むべきなのだろうか。ここでは主にサラリーマンにとっての個々人の収入格差の観点から述べてみたい。

サラリーマンにとっての公的年金といえば基礎年金の上に報酬比例年金が乗っている厚生年金であるが、その保険料は報酬比例部分も含めて給与天引きであり、本人が望むと望まざるとに関わらず、すなわち本人の意識に関わらず徴収され、それが年金給付額に反映される仕組みとなっている。その結果、将来の引退後生活のレベルが、本人の意思で保険料拠出したかどうかと関係なく自動的に格差がつく仕組みとなっている。職業および働く職場を決定するのは本人の意思によるため現役時代の収入に差が生じるのは通常であるが、引退後の生活の基礎的収入となる公的年金において、本人の意識と関係なく現役時代の生活水準格差をそのまま引きずる制度というのはどうであろうか。現役時代の収入や生活水準で、引退後の生活レベルに関していつの間にかレールが敷かれているというのには疑問を感じる。報酬比例年金を設定するのであれば、本人の意思と選択、すなわち基本的には自助努力の仕組みをベースとした制度とするのが本来の方向ではないだろうか。(引退後の生活資金となる年金を充実させるため、公的財源による補填の仕組みを組み合わせることは考えられる。)

一方、公的年金のみならず企業年金についても同様のことが言える。現在の日本において自分が働く会社を選択する際に、退職一時金や企業年金などのいわゆる退職給付制度の存在や水準を、その判断要素に加えることはほとんど無いであろう。しかし入社した会社によって引退後の生活資金となる退職給付の水準はまちまちである。中でもその給付手段となっている企業年金は引退後の収入として重要な役割を担うが、その水準のみならず年金給付される期間もさまざまで、特に終身給付であるか否かは生活資金としての位置づけに大きな影響を及ぼす。これらは、たとえ同業種であろうとも会社が異なれば異なる給付内容・水準となっており、本人の意思と関係なく現役時代の企業間格差を引退後生活にそのまま引きずる仕組みであると言える。

以上のような観点から、これからの年金制度の目指す大きな方向性としては、現役時代の生活水準格差を反映しない国民共通の基礎的年金給付と、本人の意思により選択した自助努力ベースの年金給付の組み合わせを目指していくのが、わかりやすく納得感が得られやすいのではないだろうか。定年という制度が過去のものとなり、引退年齢は自分が決定する時代となりつつある今、引退後に必要な資金についても個々人の意思により準備することの意識付けが重要であろう。漠然と公的年金や企業年金に頼る時代は終わりに近づいていることを、個人も企業も認識すべき時である。

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