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10年目の日本版ビッグ・バン

2008年09月08日

木村 浩一

12月に日本版ビッグ・バンがスタートして10年たつ。

ビッグ・バン構想当初(1996年)の目標は、「我が国においても、21世紀を迎える5年後の2001年までに、不良債権処理を進めるとともに、我が国の金融市場がNY・ロンドン並みの国際金融市場となって再生することを目指す」ものであった。しかし、金融機関の不良債権処理は大幅に遅れ、NY・ロンドン並みの国際金融市場の実現も、この10年間でNY・ロンドンとの格差は逆に大きく開くばかりであり、アジアの中での国際金融センターの地位でさえ、香港、中国、シンガポールのキャッチアップが激しさを増している。

この10年間で何が起きたのか。ビッグ・バンの実施、金融商品取引法の施行(2007年9月)、「金融・資本市場競争力強化プラン」(2007年12月)などもあり、制度面ではNY・ロンドンと遜色ないものになった。しかし、先進国も新興国もこぞって国家戦略として資本市場の強化に取り組み、世界の国際金融センターが早いスピードで変化している中では、東京市場だけがグローバルな展開から取り残され、東京市場の活力の見劣りは否めない。

我が国の証券市場改革は十分に意欲的であったものの、器の整備にとどまり中身が伴わなかったというのが実態ではなかったか。特に、ビッグ・バンの方針を定めた証券取引審議会報告書において指摘された(1)個人の主体的な市場参加、(2)機関投資家の運用力強化、(3)日本企業の株式の魅力、の3つの課題が10年後の現在も依然として課題として残ったままである。

中でも「株式の魅力向上」は、証券取引審議会報告書でも、「どのように商品の組成面で工夫を行っても、投資対象の魅力は究極的には証券の発行体たる企業等にどれだけ魅力があるかによって決まる」とし、株式の魅力向上、株主を意識した経営(ROEの向上、株主への利益還元)、株式の持合いの解消、を課題として指摘していた。

6期連続の増益により上場企業のROEは向上したものの9%台に足踏みし、欧米企業との差は縮まっていない。配当性向についても、ROEと同様、欧米企業と依然として格差が残っている。株式の持合いは、バブルの崩壊の過程で相当程度解消されたが、最近、新たなガバナンス問題として再浮上している。

イギリス経済は、1992年から16年間にわたり長期の経済成長が続いているが、その要因の1つは、ロンドンのビッグ・バン(1986年)の成功にあった。証券市場は、一国の成長分野を生み出す経済のインフラであり、ビッグ・バンは、単に証券市場の改革にとどまるものではない。ビッグ・バンを継続し、東京市場の活性化と日本企業の成長、日本経済のダイナミズムの回復を推進していかなければならない。

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