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過疎村の債務と財政健全化

2008年08月07日

星野 菜穂子

ある研究会を通じて、過疎村の調査を行う機会を得た。過疎村の抱える課題は多岐にわたるが、債務累積についても、他の多くの団体同様、重い課題となっている。過疎村は、過疎債とよばれる起債充当率100%、基準財政需要額算入率70%という、いわば交付税措置の手厚い起債を活用した事業を行っている。調査対象村における地方債残高(普通会計)に占める過疎債の割合は、約6割に達していた。過疎債は、充当できる対象事業が多様なことも特徴の一つである。道路への充当がもっとも多いが、90年代には、過疎債を通じた観光開発も積極的に行われている。過疎債は、第三セクターの出資金にも充当できるため、過疎村における三セクの設立にも一定の役割を果たしている。過疎債の債務累積は、団体によっては、観光事業との関わりも深い。

このような観光開発には、賛否両論あろう。過疎村においては、定住や雇用の確保がきわめて重要な行政上の課題であり、そもそも不採算であるが公共性の観点から必要との判断に立ち、公共部門が債務負担を負う性格の事業もある。こうした事業が、過疎地域における雇用創出や地域振興に一定の役割を果たした事例もある。一方で、行き過ぎた開発が、多大な債務負担をまねいた団体もある。また、過疎債のように交付税措置の手厚い起債であっても、地方交付税自体が減少していく中で、過疎自治体の負担が重くなってきているという事実もある。過疎村のような財政力の乏しい団体における債務負担に関しては、慎重な解釈が求められよう。

翻って、昨年成立した新しい財政健全化法(正確には、地方公共団体の財政健全化に関する法律)は、このような過疎村の抱える債務に関しても、事業の性格を問わず、一律に厳しいものにしていく可能性がある。過剰な観光開発にともなう債務負担は別としても、そもそも不採算地域であり、財政基盤の弱い過疎自治体の財政運営に、新しい財政健全化法にもとづく財政健全化は、どのような影響をもたらしていくのだろうか。今後、人口減少の深刻化とともに、交付税改革、財政健全化、三セク改革等といった一連の改革の流れの中で、過疎の問題は、注目される課題の一つとなることが予想される。

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