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洞爺湖サミットが終わって。

2008年07月24日

河口 真理子

今年の前半は、気候変動・温暖化問題がマスコミの最重要テーマであった。テレビや新聞でもしばしば地球環境問題特集が組まれ、地球環境問題、特に温暖化問題についても理解も広く社会に広がったものと期待していた。しかし、それも洞爺湖サミットまでであった。サミット終了と同時にニュースから温暖化の話題は消え、注目の話題はオリンピックにシフトしてしまった。マスコミ報道がタイムリーな話題に焦点を当てるのはわかるが、温暖化問題はサミットというインベトのための一過性のテーマではなく、日々深刻さを増す我々人類が直面する最重要課題である。社会的関心が薄れてしまっては困るのである。

しかも、サミットでは、温暖化に関して中国や米国を巻き込めたものの、具体的な目標としては、「世界全体の排出量を2050年までに半減するというビジョンを共有する」ことで合意しただけである。すなわち超長期目標を確認したものの、それを実現するためには不可欠な中期の目標数値の設定については見送られた。期待した割には大きな進展は見られなかった、というのが環境問題専門家の認識である。

しかし報道のトーンは、「なんとなくサミットは成功したようだから、環境問題も進展するのだろうし、とりあえず良かったね」ということでサミットと温暖化問題に決着をつけようとしているように見える。だがこうした議論に時間を費やしている間にも地球環境の悪化のスピードはますます加速化している。例えば、多くの科学者が今年の夏に北極海の氷がなくなると懸念するようになった。夏場における北極海の氷の面積の減少割合が昨年から急激に大きくなっているためである。また7月10日、国連食糧農業機関(FAO)は、気候変動によって引き起こされる気温とそのほかの変化が、漁業と水産養殖に強い影響をもたらし、その影響は食糧安全保障にも大きく関わると報告した。気候変動との戦いの正念場はまさにこれからであり、社会的関心をますます広げていく必要がある。

なお、福田ビジョンにも示されたように政策面では温暖化対策に大きく舵が切られることになった。再生可能エネルギーの拡大、排出権取引市場創設、省エネ技術への投資など実質的にCO2削減に寄与する対策が今後続く。東京都は、大規模事業所に対して2020年で2000年比25%のCO2排出削減を義務化する、など政策面では着実な進展が約束されている。こうした積極的な政策が出てくること自体は評価できるものの、ここで一つ欠けているものがある。それは、地球の有限性を前提とした低炭素社会にあっては、従来型の経済システム、すなわち物質的な増加を豊かさの源泉とする考え方は成り立たなくなるという認識である。既存の物質的経済システムの延長上では技術の進展だけで、CO2排出量を大幅に削減させることは可能だろうか?技術の進展と同時平行で、我々一人ひとりが、本当の幸せとは、本質的な豊かさとはなにかを問い直し、ライフスタイル自体を低炭素化に見直すことも不可欠ではないか。そのためにも、温暖化・気候変動に関する情報発信を増やし・ライフスタイル文明のあり方にまでふれる議論を深め、行動に移すことが不可欠である。

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