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米国景気は強い! 悪くなるのはこれから!!

2008年07月23日

成瀬 順也

行き過ぎた米国悲観論(昨年末から既にリセッション等)が高まったせいで、米国景気に対する誤った見方が蔓延っている。まず、再認識したいのは「足元」の景気は強いこと。ISM製造業景況指数は50前後での推移が続いている。50はあくまで生産拡大・縮小の境目で、GDPマイナス成長、リセッションの境目41.1にはまだ余裕がある。小売売上高も自動車を除けば、逆に伸び率は高まっている。ただし、消費の回復は一時的な戻し減税効果によるところが大きい。在庫も積み上がっている。戻し減税効果の剥落と在庫調整が重なり、米国景気は「これから」急激に失速しよう。足元だけを見て、リセッションなのにこの程度か、などと侮っている場合ではないだろう。

勘違いの原因は、米国景気がまだら模様なことにあろう。それも差が激しいので、どこから見るかでピクチャーが全く違ってくる。外需好調vs内需低迷、内需の中でも企業好調vs個人低迷、個人消費でも必需品好調vs裁量品低迷、といった具合である。今後、それぞれの格差は一層広がるとともに、新たな格差も出てこよう。例えば、企業については、設備投資の先行指標となるコア資本財受注は依然として、横ばい。良くも悪くもならないと見られる一方、住宅以外の建設支出はやっと伸び率が鈍化し始めたところである。実は、バブルの後始末はこれから本格化するのかもしれない。

今回の米国景気の特徴は、減速が非常に緩やかなこと。ITバブル崩壊以降、慎重な経営態度を採り続けてきた米国企業は、設備も在庫も雇用も過剰に増やさなかった。だから、景気が減速し始めても、慌てて設備投資削減や在庫調整、リストラなどを行なわずに済んだのである。おかげで、通常の減速期に見られるスパイラル的な悪化には陥っていない。個人が行き過ぎた住宅購入と過剰消費のツケに苦しんでいるのとは、対照的である。

本来、緩やかな減速なら、手を打ちやすい筈。しかし、金融政策は、原油高によるインフレ懸念に手足を縛られてしまった。財政政策も、11月4日に大統領選を控え、低所得層向け・労働者寄りの歳出拡大を主張する民主党と、高所得層向け・企業寄りの減税を主張する共和党の間で追加対策をまとめるのは難しい。そもそも、減速が緩やかなため、金融、財政ともに戻し減税効果を見極めようとのんびりムードが漂っており、金融機関・金融市場対策に追われて景気対策が後回しになっているように見える。せっかく景気減速が緩やかなのに、そのプラス面を生かし切れず、最終的にはリセッション入りしてしまう確率が高まってきたようだ。

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