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注目される個人マネーの今後の行方「貯蓄か投資か」

2008年06月19日

壁谷 洋和

4月中旬以降の株式市場では、活発な海外資金の流入により、底堅い相場展開が続いている。しかし一方で、個人マネーの流入は、今ひとつ活発さを欠いている。投資信託協会がまとめる投信概況によれば、4月の株式投信の純流入額(設定から解約・償還を引いた金額)はわずか657億円。5月の純流入額は4,332億円に回復したが、昨夏と比べ資金流入のペースが鈍りつつあることは明らかだ。これまで銀行窓販の積極化を背景に拡大を続けてきた株式投信だが、足元で正念場を迎えている。

株式投信に対する資金の出入りを、投信のタイプ別の資金フローから確認すると、2007年の夏頃までは、国際株式型および株式債券型(バランス型)が人気を博し、それぞれ月間で6,000~8,000億円の資金を集めた。しかし、その後サブプライム問題の表面化で世界の金融不安が高まると、両者への資金流入は次第に細っていった。2008年に入ってから株式債券型は資金流出に転じ、国際株式型の資金フローも3-4月にマイナスとなった。

国内株式型に関しては、昨秋以降、目立った資金流出は起きていないが、新たな資金が流入している様子も見受けられない。唯一、債券型だけが健闘してはいるものの、先の2つのタイプの投信からの資金流出の影響が大きく、株式投信全体の資金フローは冷え込んだ状態にある。

日銀の資金循環統計をもとに、個人金融資産に占める現預金と国債、および株式と投信の割合を調べると、2007年後半から現預金や国債といった安全資産の比率が上昇し、株式や投信などのリスク資産の比率が低下したことが分かる。ここでは、株式および投信が時価で評価されているため、株価下落は株式および投信の残高目減りに直結する面がある。それだけで、現預金の比率は相対的に上がってしまうこともあるだろう。

しかし、個人の保有する現預金の伸び率(対前年同期比)を見ても、2005年から2006年にかけてマイナスで推移したものが、2007年には再びプラスに転じている。つまり、現預金残高は着実に積み上がり、およそ1,500兆円存在する個人マネーの一部はまさに「投資から貯蓄へ」とシフトしていったことが裏付けられる。

本来ならば、「貯蓄から投資へ」を合言葉に、投信は株式市場の中で主要な買い手としての役割を果たすことが期待されている。それだけに、株式投信からの資金の引き揚げという現実は、理想と逆行した動きとして重く受け止める必要があるだろう。こうした個人のマネーフローは、決して見過ごすことはできない問題と言える。確かに、資金流出が顕著な投信のタイプは、国際株式型や株式債券型などだが、それらの投信でも日本株を一部組入れているケースが多い。国内株式型の投信以外の動きだからといって、日本株と直接的な関係がないとは言い切れないのである。

一般に国内株式型投信への資金フローと株価の関係は、短期で逆バリ・中長期で順バリとなる傾向が強いと考えられる。よって、国内株式型の投信に対してコンスタントな資金流入を見込むためには、半年程度の堅調な株価推移という条件が必要になってくると思われる。投信に対する資金流入の本格化には、今しばらくの時間が必要か。

足元の株式相場は比較的堅調だが、依然として昨年末の水準を回復するには至っていない。4月以降の株価上昇は、ショートカバーも含めた外国人の買いによって、もたらされたと見ることができる。息の長い相場上昇のためには、「全員参加型」の投資家の姿勢が必要とされるであろう。しかし、今の個人投資家にはまだ、必ずしもその準備は整っていないのかも知れない。

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