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丸の内仲通りの幸福

2008年06月02日

原田 泰

世界には美しく豪壮な街並みが多い。ヨーロッパの都市の統一のとれた堂々たる街並みもアメリカのマンハッタンのこれ見よがしの街並みも魅力的だ。

日本で一番美しい街並みはどこかと言えば、私は、丸ビルの裏から日比谷まで続く丸の内仲通りだと思う。そこに大理石で飾った豪壮な建物がある訳ではない。ただ近代的なビルが並ぶだけだ。その1階には高級ブランドショップが並ぶ。しかし、最も高価なものを売っているという訳ではない。

この通りには、少し前まで、お店はほとんどなかった。オフィス・ビルでは1階は値打ちが低いが、お店であれば1階の家賃が一番高い。しかも、お店の家賃の方がオフィスの家賃よりも高い。そこに気がついたビルのオーナーが、テナント獲得に乗り出し、きれいなお店が整然と並ぶ通りとなった。

通りもブールヴァードやアヴェニュー(大通り)ではない。何しろ仲通りというくらいなのだから。人通りもそれほど多いわけではない。そこを歌って歩きたいほどの開放感がある訳ではない。ひたすら清潔で、ひたすら小奇麗で、ひたすらきちんとしているだけだ。しかし、こんな街は、世界のどこにもないと私は思う。

仲通りを歩く人は、スーツ姿の男性と女性。通りのレストランには、初老の男性と若い女性の組み合わせはいない。多くのレストランが、この組み合わせに頼っているのに、ここにはいない。外から見えて、街に同僚が多すぎるからだろう。

この美しい街は、日本の中流階級文化が生み出したものだ。成功した中流層の、清潔で、きちんとしていることが大事だという文化が、この街を生み出した。この街は、日本の中流階級文化が続くかぎり、世界の中でただ一つだけ、美しく輝いているだろう。

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