日本におけるバイオマス産業の展望

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2008年05月26日

  • 小山 敦
化石燃料の価格高騰に伴い、代替エネルギー源としてのバイオマス資源が注目されている。海外では、ガソリンや軽油を代替するバイオ燃料の生産量が激増したことにより、トウモロコシや小麦等の需給が逼迫している。代替エネルギーとしてのバイオマスの活用が、食糧危機を引き起こすのではないかという懸念が発生している。

穀物の栽培に不利な条件がそろう日本では、バイオマス資源の活用は、主に廃棄物処理の一環として発展してきたことから、食糧不足を引き起こす懸念は小さい。製紙工場の木質廃液を利用した発電や、建築廃材・食品残渣等を利用した熱・ガスの生産などが主な活用例である。

近年になって、活用の範囲を拡大させる出来事が発生している。2007年12月に施行された改正食品リサイクル法の下で、年間100トン以上の食品廃棄物を発生する食品会社・小売・外食等の事業者は、その再生利用等に取り組むべきとされた。外食産業で発生する廃油をディーゼル燃料として再利用する取り組みや、食品残渣を発酵させエタノールを生産する取り組みが、各社から打ち出されている。

地球温暖化防止のため、日本政府は京都議定書に基づき、2008年から2012年までの間に二酸化炭素をはじめとする温暖化ガスの発生量を1990年比で6%減少させることを打ち出している。6%の6割以上を占める3.8%を「森林による吸収減の確保」として削減する方針である。日本の森林は戦後に植林されたものが多く、樹木の多くは成長期にある。樹木は成長によって、大気中に排出された二酸化炭素を有機物として固定していく。適切に管理され、成長期にある樹木を多数抱える森林は、二酸化炭素の吸収源として捉えることができる。

森林の二酸化炭素吸収能力を高めるため、林野庁は、間伐(間引き)を大規模に実施し、残った樹木の成長力を高める方針である。間伐によって発生する多量の木質バイオマスの活用が今後の課題となる。

バイオマスエネルギーは、化石燃料と比較すると、重量あたりの発生熱量が小さい、生産にあたってエネルギーを必要とする、バイオマス資源の輸送コストが高い、等の欠点を有する。活用の拡大を図るに当たっては、いっそうの技術開発が必要である。木質中のセルロースからエタノールを生産しやすくする酵素や、化石燃料を用いずバイオマス資源のみで燃料ガスを精製できるプラントなどの研究が各所でなされている。高騰する化石燃料を代替するとともに、地球環境保護に役立つ資源として、バイオマスは今後ますます注目を集めていこう。

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