2008年05月14日
やや長めにみると、サブプライム危機を元凶とした悲観ムード(弱気相場)は、3月中旬の米大手証券会社ベアスターンズ救済劇を境に、急速に揺り戻しに動いている。反動・調整を交えながらも、まだ大勢としてその流れにあると考えられる。
昨年夏場のサブプライム危機以降、米国における信用収縮不安が高まり、投資マネーが萎縮し、米景気が悪化する過程で、米低格付け債のリスクスプレッドが異様な上昇をみせ、ドル安が進行したが、これらと連動する形で、08年3月17日にかけて日本株の急落が進んだ。当日のTOPIX は1,149、為替は95円/ドルをつけた。その過程で、日本株の中では外需関連株(特に市況関連株や資本財株など景気敏感株)、金融株、不動産株などが大幅に下落した。米国の住宅市場や金融機関に対して「大恐慌以来の悲惨な状況・・・」といった厳しい見方や評価も聴かれた。
一方、今年3月中旬以降、ベアスターンズ救済劇を契機に震源地の米国経済・金融市場で改善の兆しが広がり、信用収縮の後退(信用拡大)、投資マネーのリスクテイク、米景気の改善期待→ドル持ち直し(円安)→日本株の上昇という流れになっている。グローバルな投資家はリスクをとるようになり、株式のウェイトを高め、日本株にも資金が回りだしている。日本株はこのような局面においては、海外主要株式市場に対してアウトパフォームする可能性が高くなる。物色面では外需関連株を筆頭に金融株、不動産株などに上昇機運が高まっている。
岐路に立つ米国株式市場だが、当局の迅速で思い切った政策対応と累積効果が、信用収縮や景況感の悪化に対する投資家の弱気心理に優り始めている。米経済は減税を中心とする景気対策や金融緩和効果(実質マイナス金利)から、08年後半以降回復期待が強まりそうだ。景気底入れから米FRBが利下げ打ち止めという形になれば、悲観ムード一色であった投資環境に対する見方が大きく好転する可能性が出てくる。主要国の株式市場には、明るさ、安心感が広がってこよう。投資環境認識が「新興国主導での世界経済の高めの成長、過剰流動性、米国の実質マイナス金利」に注視する形で、一変する可能性があるなど、想定以上の反騰相場になることも視野に入れておくべきだろう。
日本株が歴史的な大底をつけた03年当時を振り返ると、政府が03年5月17日にりそなへの公的資金の投入を決定し、それが日本株の大底、債券のピークを確認することになったが、このあたりを境に猛烈な揺り戻しが生じ、株式は暴騰、債券は暴落となった。今回の戻しをどの程度とみるのか、難しいところだが、反動を交えながらも03年春~夏当時に似たような揺り戻しになることもシナリオの1つとして考慮すべきと推察される。
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