平成18年度・大学法人の収支性指標の概観

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2008年05月12日

  • 内藤 武史
平成18年度の大学法人の収支性指標の最大の注目点は、「学校事業収支=学校事業収入-学校事業支出」が254百万円、「事業外収支=事業外収入-事業外支出」が452百万円となり、平成10年度以降ではじめて学校事業収支が事業外収支を下回ったことである。このことは帰属収入に対する学校事業収入と事業外収入の寄与度がともに0.6%と並んだことに端的に裏付けられている(下表)。事業外収入の項目別寄与度は資産運用収入が0.5%、資産売却差額が0.2%となっている。資産運用収入の大半は受取利息・配当金収入であり、「受取利息・配当金等/(有価証券+貸付金+引当特定資産等+現金預金)」は1.323%と平成10年度以降で最も高くなっている。

図:学校事業収入と事業外収入の寄与度
(出所)大和総研公共政策研究所

次に、主要指標をみてみよう。平成18年度は帰属収入が前年度比1.2%増にとどまる一方、消費支出が前年度比2.5%増となった。その結果として、企業の使用総資本事業利益率(ROA)に該当する「{(学校事業収入-学校事業支出)+事業外収入}/総資産」、売上高事業利益率に当たる「{(学校事業収入-学校事業支出)+事業外収入}/学校事業収入」、売上高営業利益率に該当する「(学校事業収入-学校事業支出)/学校事業収入」、売上高経常利益率に当たる「帰属収支差額/学校事業収入」といった代表的な指標がいずれも低下しており、特に(3)の低下の度合いが大きい。但し、「減価償却費/学校事業収入」が9.4%と高水準を保っていることから、キャッシュ・フロー・マージンに当たる「{(学校事業収入-学校事業支出)+減価償却費}/学校事業収入」は12.5%と10%台を維持している。

「人件費比率=人件費/帰属収入」 は97.5%と平成10年度以降連続で上昇している。「人件費比率=人件費/帰属収入」 は帰属収入の伸び率(前年度比+1.2%)が人件費の伸び率(同+2.3%)を大幅に上回ったため、49.9%に上昇した。ちなみに、平成18年度は人件費が前年度比2.3%上昇しており、平成10年度以降で最大の上昇率となっている。「人件費依存率=人件費/学生生徒等納付金」 は91.0%と90%台に乗ってきた。

「借入金等利息比率=借入金等利息/帰属収入」は0.4%と低位横ばいであり、企業の有利子負債金利に当たる「借入金等利息/(長期借入金+短期借入金+学校債)」は2.141%と平成16年度以降2.1%台で推移している。

「学生生徒等納付金比率=学生生徒等納付金/帰属収入」は54.9%に低下し、平成10年度以降で最低となった。前年度に大幅に上昇した「寄付金比率=寄付金/帰属収入」は2.4%と前年度比0.5%ポイント低下し、「事業収入/帰属収入」は24.1%、「資産運用収入/帰属収入」は2.7%、「資産売却差額/帰属収入」は1.3%といずれも平成10年度以降で最高となっている。金融収支に当たる「受取利息・配当金等-借入金等利息」は179百万円と前年度に続き黒字幅が大幅に拡大している。

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