注目される明日のFOMC

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2008年04月30日

  • 小林 卓典

世界に波及した信用収縮の嵐が完全に去ったという確証には乏しいものの、1ヶ月前より市場心理は大きく改善している。3月中旬にベアスターンズ救済が行われたとき、FFレート先物市場は、FRB (連邦準備制度理事会)がFFレートを1.5%まで引き下げることを示していた。その後、0.75%の利下げが行われ、FFレートは2.25%となった。しかし、4月30日時点で、利下げはあったとしてもあと1度。日本時間5月1日未明のFOMC(連邦公開市場委員会)で0.25%の利下げが行われた後、逆にFRBは年内に利上げに転じ、FFレートを2.25%に戻すという予想に変わっている。

市場心理の変化をもたらしたものは、米国大手金融機関のサブプライムローン関連の損失計上額が峠を越したという見方が強まったためだ。確かにCDSスプレッドはこのところ急速に低下し、信用市場の回復が確認される。ただし、ロンドン市場における銀行間取引金利LIBORは、依然として跳ね上がったままであり、平時の金利水準に戻っていない。FRBが信用逼迫を解消するために実施した様々な流動性供給策は、今のところ期待されたほどの成果を上げるには至っていない。

信用市場が回復の途上にあるとしても、米国が景気後退に陥ってしまえば実体経済から信用市場への負の連鎖が強まってしまう。しかし、景気が悪化するとき常に議論になるのは、現在の政策金利水準が、将来の景気回復を保証するほど十分に引き下げられているかどうかということである。金融政策が景気回復に効果を表すまでには1年以上の時間が必要となる。

明日のFOMCの声明文で利下げ打ち止め感が出されないなら、ドル安、商品価格上昇が続き、逆に打ち止め感が出されるなら、ドル高、商品価格下落という予想が強まるだろう。当然、それは、金融政策が米国経済を回復させるにすでに十分であるという市場の信頼を得なければならない。その意味でFOMCの決定は非常に重要なものになりそうだ。

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