注目される中国鉄道産業

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2008年04月09日

  • 加治 大器
中国では鉄道インフラ建設への投資が2005年から急速に拡大している。背景は、鉄道輸送能力の不足が深刻化してきたことである。政府は第11次5ヵ年計画(06~10年)で、前5ヵ年計画の3.6倍に相当する1.25兆元を投資することを決定。投資額は04年の516億元から、今後1~2年で3,000億元に達する見込みである。

投資の中心は高速旅客専用線の建設。中国は97年以来高速化を図ってきたが、既存路線ではその効果が限界に近づいたためである。目標は、(1)10年までに7,000km、20年までに12,000kmを完成させ、旅客輸送と貨物輸送の分離による効率化を図ること、(2)基本設計で時速300km以上を実現し、世界最高レベルの仲間入りをすること、(3)国産化率を70%以上とし、不足する技術は外国からの技術移転により吸収し、さらなる上昇を目指すこと、である。例えば、車両では、中国を代表する中国北方機車グループ、中国南方機車グループの2社が、アルストム、シーメンス、ボンバルディア、川崎重工業といった世界の有力企業から高速鉄道車両の技術移転を受け、国内生産に取り組んでいる。

期待される国内関連企業への波及効果

鉄道インフラ建設への投資拡大は、国内関連企業に多大な波及効果をもたらそう。その寄与は、単なる売上高拡大のみにとどまらない。高速化技術の習得は、国内企業の技術力、国際競争力の向上に寄与し、収益性改善や国際事業拡大の機会をもたらそう。これは、関連企業を評価するうえで重要なポイント。国内関連企業の収益性は低く、国内依存度が高い。また、国内売上高拡大による利益けん引が顕著であるのは今後2~3年。収益性改善や国際事業拡大への実現性が高まれば、中長期的にも利益拡大が見込めよう。

現在の投資計画は07年10月に上方修正された(※1)。ただし、今後1~2年の投資拡大ペースが急速であるため、依然として10年以降の投資拡大は見込みにくい。しかし、鉄道輸送能力の不足感、経済成長ペースを考慮すれば、さらなる投資予算額の上方修正が予想される。また、規制緩和や民営化が進展し、運賃や投資計画の最終決定権が政府から分離され、収益見通しの透明性が高まれば、国内外からさらなる投資資金を呼び込むことも可能となろう。

08年の鉄道インフラに対する投資額は前年比44%増を予想。また、建設大手2社(※2)に続き、中国南方機車グループ、中国北方機車グループのIPOも予想される。今年も中国鉄道産業から目が離せない。

(※1)04年1月発表の中長期計画では、政府は06~20年で2兆元の投資を予定していたが、06~07年で約3,400億元を投資した後、08~20年でさらに2兆元を投資すると発表。

(※2)中国中鉄が07年12月7日に、中国鉄道建築が08年3月13日に香港株式市場に上場。

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