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証券・投資銀行・保険から商業銀行へ

2008年04月08日

成瀬 順也

ドイツ銀行が追加損失の計上を示唆したことから、米国の金融機関についても、4月中~下旬の1~3月期決算を見極めたいとのムードが広がっている。しかし、4月に入って日米の株式市場は急騰。サブプライム関連の証券化商品急落を発端とする信用不安については、最悪期を脱した感も強い。正反対とも思える二つの投資家心理は、何を示唆しているのか。

ベアー・スターンズの資金繰り懸念に際し、米金融当局はNY連銀による緊急融資枠を設定。今後のために、中央銀行から証券会社に対する直接融資の枠組みや、融資の担保として投資適格以上のABS(資産担保証券)全般を受け入れる体制も整えた。しかも、ベアー社を救済合併するJPモルガン・チェースが10億ドルを出資、NY連銀が290億ドルを融資してファンドを設立。ベアー社が保有する流動性が小さい資産300億ドル分を買い取るが、JPモルガン社の出資額を上回る損失が発生した場合には、NY連銀が損失を負担する。公的資金投入に限りなく近いスキームと言える。FRBとしては、証券化商品の価格が既に底値圏へ到達しており、中長期で見れば回復に向かうとの判断が働いたものと考えられる。

保険最大手のAIGも、満期まで保有する余力のある当社が、何故こんなに流動性が小さい時点での異常な価格をもとにした評価損を計上しなければならないのかと、監査法人や当局に対する怒りを込めたコメントを発している。米国の証券・投資銀行・保険会社などが保有する証券化商品を巡る損失は、おそらく2007年10~12月期がピークで、今後は損失幅が縮小するだろう。場合によっては後々利益が戻ってくるケースも少なくないと見ている。時価評価の甘い欧州の一部の銀行とは、一線を画して考える必要があろう。

しかし、最悪期を脱しつつあるのは、あくまで証券価格を巡る損失であり、実体経済の悪化に伴う商業銀行の不良債権増加は、これからが本番だろう。消費者サイドではクレジットカードや証券化されていない住宅ローンを巡る不良債権など、企業サイドでは金融機関の貸出態度厳格化によって締め出される業績不振の中小企業などが問題となってこよう。懸念の対象は、証券・投資銀行・保険から、商業銀行に移るものと考えられる。

ただし、急落した証券価格とは違い、徐々に徐々に悪くなっていく類の話である。追加景気対策が打たれない限り、戻し減税効果が切れる今秋か今冬には、米国経済再失速の可能性が高まる。場合によっては、中小ないしは準大手どころの商業銀行に、信用不安が表面化する可能性もあろう。サブプライム問題では、未だ公的資金の直接投入には至っていない。証券・投資銀行・保険会社が問題の中心だからである。しかし、商業銀行の不良債権がクローズアップされるようになると、風向きも変わってこよう。自己責任の原則が強い米国でも、一般庶民にも影響が及ぶ商業銀行が破綻するかもしれないとなれば、公的資金投入の機運も高まりやすいからである。今から半年ないしは1年後が、商業銀行も含めた問題解決の一つの目安になると見ている。

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