株価低迷時こそ、個人投資家作りを
2008年04月07日
米国におけるサブプライム・ローン問題などをきっかけに、世界的に株式市況が低迷している。特に、日本の株式市場は、先進国の中でも下落率が大きく、2008年3月末時点では1年前と比べて30%弱の低下となっている。
サブプライム・ローン問題が欧米ほど深刻ではなかったにもかかわらず、日本市場の下落が大きかった要因としては、政治不信や「改革への期待」が裏切られたことなどが挙げられているが、根本的には外国人投資家が株式売買の大半を占め、国内の投資家の層が薄いことが、株価の振幅を大きくしている原因の1つであろう。
確かにここ数年、投資信託の販売が盛んになり、特に銀行による窓販が証券会社などを凌ぐようにもなってきているが、その中身を見ると「毎月分配型」の投資信託が中心で、実際は外国債券への投資などに回っているのが現状である。個人投資家の株式投資は、ネットトレーダーによる超短期売買ばかりが目立っていて、株価の下落局面においては、相場を下支えするような中・長期投資は限定的であるように思われる。
しかし、現在のような株価水準は、考え方次第では、個人投資家を育成する上では、絶好の環境であるとも思われる。相場の過熱感がなく、逆に長い目で見れば割安感さえ指摘されている今こそ、他の欧米諸国に比べて出遅れていた個人金融資産の資本市場への誘導をサポートして行くチャンスであると考えられる。
具体的には、やはり何と言っても、日本版401k(確定拠出型年金)の制度見直しがポイントとなろう。日本版401kは、2001年にスタートした制度である。当初は、この制度導入をきっかけに、個人金融資産が資本市場へと徐々に流入し、金融マーケット活性化の足掛かりになるのでは、と大いに期待されていた。しかし、現実には、掛け金の非課税上限額が低く抑えられ、また企業型に関しては企業拠出のみで、米国の制度には存在する個人拠出(マッチング拠出)が認められなかった。このようなこともあり、盛り上がった機運は急速に萎み、ここ6年間ほどはマスコミなどでも取り上げられる機会が減ってしまっているのが現状である。
掛金の非課税上限額の引き上げと、個人拠出の一定水準の解禁を早期に実施することによって、もう一度、個人投資家を育成して行く流れをサポートしていくことが必要であると考えられる。確かに日本版401kの運用資金が日本の国内市場にばかり流れるわけではない。しかし、約1500兆円とも言われる個人金融資産の大半が預貯金に留まってしまっている現状は、やはり変えて行かないといけないであろう。
層の厚い成熟した資本市場を持たない限り、いくら「金融立国」を叫んでも虚しい。外国人頼みの株式相場から脱却し、日本の個人金融資産の一部をスムーズに資本市場につなげる必要があると思われる。資本主義国家として、今後、発展していくためにも、日本の個人投資家層をこの機会に育成していく必要がある。
サブプライム・ローン問題が欧米ほど深刻ではなかったにもかかわらず、日本市場の下落が大きかった要因としては、政治不信や「改革への期待」が裏切られたことなどが挙げられているが、根本的には外国人投資家が株式売買の大半を占め、国内の投資家の層が薄いことが、株価の振幅を大きくしている原因の1つであろう。
確かにここ数年、投資信託の販売が盛んになり、特に銀行による窓販が証券会社などを凌ぐようにもなってきているが、その中身を見ると「毎月分配型」の投資信託が中心で、実際は外国債券への投資などに回っているのが現状である。個人投資家の株式投資は、ネットトレーダーによる超短期売買ばかりが目立っていて、株価の下落局面においては、相場を下支えするような中・長期投資は限定的であるように思われる。
しかし、現在のような株価水準は、考え方次第では、個人投資家を育成する上では、絶好の環境であるとも思われる。相場の過熱感がなく、逆に長い目で見れば割安感さえ指摘されている今こそ、他の欧米諸国に比べて出遅れていた個人金融資産の資本市場への誘導をサポートして行くチャンスであると考えられる。
具体的には、やはり何と言っても、日本版401k(確定拠出型年金)の制度見直しがポイントとなろう。日本版401kは、2001年にスタートした制度である。当初は、この制度導入をきっかけに、個人金融資産が資本市場へと徐々に流入し、金融マーケット活性化の足掛かりになるのでは、と大いに期待されていた。しかし、現実には、掛け金の非課税上限額が低く抑えられ、また企業型に関しては企業拠出のみで、米国の制度には存在する個人拠出(マッチング拠出)が認められなかった。このようなこともあり、盛り上がった機運は急速に萎み、ここ6年間ほどはマスコミなどでも取り上げられる機会が減ってしまっているのが現状である。
掛金の非課税上限額の引き上げと、個人拠出の一定水準の解禁を早期に実施することによって、もう一度、個人投資家を育成して行く流れをサポートしていくことが必要であると考えられる。確かに日本版401kの運用資金が日本の国内市場にばかり流れるわけではない。しかし、約1500兆円とも言われる個人金融資産の大半が預貯金に留まってしまっている現状は、やはり変えて行かないといけないであろう。
層の厚い成熟した資本市場を持たない限り、いくら「金融立国」を叫んでも虚しい。外国人頼みの株式相場から脱却し、日本の個人金融資産の一部をスムーズに資本市場につなげる必要があると思われる。資本主義国家として、今後、発展していくためにも、日本の個人投資家層をこの機会に育成していく必要がある。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
メタバースは本当に幻滅期で終わったか?
リアル復権時代も大きい将来性、足元のデータや活用事例で再確認
2025年06月11日
-
議決権行使助言業者規制を明確化:英FRC
スチュワードシップ・コード改訂で助言業者向け条項を新設
2025年06月10日
-
上場後の高い成長を見据えたIPOの推進に求められるものとは
グロース市場改革の一環として、東証内のIPO連携会議で経営者向け情報発信を検討
2025年06月10日
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
「内巻」(破滅的競争)に巻き込まれる中国自動車業界
2025年06月11日