株価低迷時こそ、個人投資家作りを
2008年04月07日
サブプライム・ローン問題が欧米ほど深刻ではなかったにもかかわらず、日本市場の下落が大きかった要因としては、政治不信や「改革への期待」が裏切られたことなどが挙げられているが、根本的には外国人投資家が株式売買の大半を占め、国内の投資家の層が薄いことが、株価の振幅を大きくしている原因の1つであろう。
確かにここ数年、投資信託の販売が盛んになり、特に銀行による窓販が証券会社などを凌ぐようにもなってきているが、その中身を見ると「毎月分配型」の投資信託が中心で、実際は外国債券への投資などに回っているのが現状である。個人投資家の株式投資は、ネットトレーダーによる超短期売買ばかりが目立っていて、株価の下落局面においては、相場を下支えするような中・長期投資は限定的であるように思われる。
しかし、現在のような株価水準は、考え方次第では、個人投資家を育成する上では、絶好の環境であるとも思われる。相場の過熱感がなく、逆に長い目で見れば割安感さえ指摘されている今こそ、他の欧米諸国に比べて出遅れていた個人金融資産の資本市場への誘導をサポートして行くチャンスであると考えられる。
具体的には、やはり何と言っても、日本版401k(確定拠出型年金)の制度見直しがポイントとなろう。日本版401kは、2001年にスタートした制度である。当初は、この制度導入をきっかけに、個人金融資産が資本市場へと徐々に流入し、金融マーケット活性化の足掛かりになるのでは、と大いに期待されていた。しかし、現実には、掛け金の非課税上限額が低く抑えられ、また企業型に関しては企業拠出のみで、米国の制度には存在する個人拠出(マッチング拠出)が認められなかった。このようなこともあり、盛り上がった機運は急速に萎み、ここ6年間ほどはマスコミなどでも取り上げられる機会が減ってしまっているのが現状である。
掛金の非課税上限額の引き上げと、個人拠出の一定水準の解禁を早期に実施することによって、もう一度、個人投資家を育成して行く流れをサポートしていくことが必要であると考えられる。確かに日本版401kの運用資金が日本の国内市場にばかり流れるわけではない。しかし、約1500兆円とも言われる個人金融資産の大半が預貯金に留まってしまっている現状は、やはり変えて行かないといけないであろう。
層の厚い成熟した資本市場を持たない限り、いくら「金融立国」を叫んでも虚しい。外国人頼みの株式相場から脱却し、日本の個人金融資産の一部をスムーズに資本市場につなげる必要があると思われる。資本主義国家として、今後、発展していくためにも、日本の個人投資家層をこの機会に育成していく必要がある。
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