台湾の国民党は与党かそれとも野党か?

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2008年03月28日

  • 肖 敏捷
60年前の内戦で共産党に敗れ、大陸から逃れてきた国民党は、台湾で一党独裁の地位を守り続けてきた。75年に蒋介石元総統、翌年に毛沢東元主席が相次いで亡くなったのを契機に、大陸と台湾との間で長年続いてきた軍事的な対立が大幅に緩和し、台湾では戒厳令が解除され、大陸で改革・開放が始まった。

ただし、経済復興に必死な大陸とは対照的に、アジアの新興工業国として頭角を現し始めた台湾では、蒋介石氏の息子である蒋経国元総統が政治犯を大量に釈放し、報道や結党の自由を認めるなど、民主化の実現に取り組み始めた。その最大の成果は、86年の民進党誕生、及び96年の総統直接選挙の実現である。2000年の総統選挙では、民進党の陳水扁氏が当選したことで、国民党の長期政権に終止符が打たれた。その後の2期8年間、野党として国民党は世代交代などの改革を断行し、政権奪回に向けた準備を重ねてきた。

3月22日、台湾総統選挙の投開票が行われ、野党国民党の候補である馬英九氏は大差で与党民進党の謝長廷氏を破り、8年ぶりの政権交代を実現させた。中国政府が提案している「三通」(通商、通航、通信)の実現をめぐって、一部の離島に限定すべきだと慎重な姿勢をみせている与党民進党に対し、馬氏は「両岸共同市場」という構想を打ち出し、中台間の航空直行便の就航や中国からの観光客受け入れなど、「三通」の実現に前向きな姿勢をアピールし続けてきた。結果的には、台湾の有権者は台湾独立を志向する民進党より、中国大陸との経済的な融和を目指す国民党を選択したわけである。

一方、政治面では国民党は、共産党との「全面合作」を実現させる可能性はほとんどないと考えられる。チベット問題を巡って馬氏は、混乱が続けば北京五輪のボイコットも辞さないと中国政府の対応を激しく非難している。この場合、欧米などに対し、中国政府が「内政干渉」だと反論するかもしれないが、05年4月、60年ぶりに共産党と国民党とのトップ会談が実現したところも予想されたように、共産党は国民党の意見に耳を傾けるはずだ。台湾では国民党は与党の地位を奪回したものの、中国大陸の政治改革を促すなど、共産党をけん制する唯一の「野党」としての役割にも注目すべきであろう。

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