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課徴金制度の柔軟な運用に向けて

2008年03月25日

金融調査部 主任研究員 横山 淳

去る3月4日、金融商品取引法等の改正法案が国会に提出された。その中には、銀行・証券のファイアーウォール規制の見直しやプロ向け市場の整備などに加え、課徴金制度の見直しも盛り込まれている。

金融商品取引法上の課徴金制度は、旧証券取引法時代の2005年に、軽微なケースも含めてより多くの違反行為の摘発を容易にし、市場規制等の実効性を高めることを目的に導入された。実際、制度導入から2008年2月末までに40件の課徴金納付命令勧告が証券取引等監視委員会によって行われている。その意味で、わが国市場の公正性・信頼性を高める上で、一定の成果を挙げていると言えるだろう。

その一方で、最近、課徴金制度に対して批判的な声が聞かれることもある。その代表的なものとして「課徴金は、行為の悪質性の大小を問わず、外形的な法令違反に対して機械的に課されてしまう。そのため、金額的にも僅少なうっかりミスも処分されてしまう」というものがある。こうした立場の論者は、「金額的に僅少なもの」や「うっかりミス」について課徴金を免除すべきだと主張することもある。

しかし、こうした主張がわが国市場の公正性・信頼性の観点から受入れ可能かと問われれば、答えは「否」である。「金額的に僅少なもの」を免除するということになれば、「インサイダー取引も軽微なものなら許される」という誤ったメッセージを市場に発信することになりかねない。「うっかりミス」なら免除するということになれば、企業の内部管理体制に対する姿勢が後退すると受け止められる危険性がある。一旦、そうした不信が生じた場合、いくら「課徴金による制裁はなくても自主的に努力している」と主張したところで市場の信頼を回復することは難しいだろう。その意味でも、「金額的に僅少なもの」や「うっかりミス」であっても処分され得るという緊張感を通じて、関係者が衿を正すように促すことは重要だと思われる。

とはいえ、刑事告発されてもおかしくないような悪質な違反行為も、悪意に乏しい「うっかりミス」も、同じ計算式で機械的に課徴金が算出されるのは納得がいかないという主張は心情的に理解できる。この点について、今回の改正法案で悪質な再犯には課徴金の額を1.5倍にし、一定の違反行為を自首した場合には課徴金を半額にするという改正が盛り込まれていることは注目に値する。もちろん、実際の運用状況を見極めなければならないが、今後、課徴金制度のきめ細かい柔軟な運用を可能とする契機となることを期待したい。

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