首都圏空港のあるべき姿

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2008年03月17日

  • 平井 小百合
同一地域にある複数空港は一体運営が効率的

首都圏空港である羽田空港と成田空港について、極めて不可解であるのは、羽田と成田空港の運営主体が同一でないことだ。羽田空港は、上場会社の日本空港ビルデングがターミナルビルの商業施設の運営を担っており、滑走路や基本施設は国が所有し運営している。一方、成田空港は滑走路等の基本施設とターミナルビルをすべて成田国際空港株式会社が所有・経営している。海外でも大都市圏には複数の空港が存在するが、運営主体が同一であるのが一般的である。例えば、ロンドンにはヒースロー、ガトウィック、スタンステッドの3大空港があるが、すべてBAAという民間企業が所有・経営している。パリでは、国際線を主とするシャルル・ド・ゴールと国内線を主とするオルリーとル・ブルジェがあるが、ADP(パリ空港会社)が所有・経営している。またミラノでは、国内線のリナーテと国際線のマルペンサをミラノ空港公社が、そしてニューヨークでは、ジョンF.ケネディー、ラガーディア、ニューアークをポート・オーソリティー・オブ・ニューヨーク・ニュージャージー(PANYNJ)が所有・運営している(下図参照)。

成田空港と羽田空港の統合は国益に資する

成田国際空港株式会社は2009年度以降の上場を目指し準備中である。国土交通省は成田空港の上場を前に羽田の国際化を発着回数3万回までに死守する姿勢であるが、利用者の利便性向上と国益そのものについて言えば、成田と羽田は統合すべきである。上述した海外事例に見るように、同一地域にある複数の空港の経営主体が一体であれば、需要に合わせたより効率的な空港運営が達成でき、両空港間のアクセス整備やトランジット割引(※1)など、利用者に対するさまざまなサービス向上も創意工夫で可能になるであろう。空港の安定経営という面でも、行政のスロット(※2)配分による経営リスクなど不要なリスクが取り除かれ、世界トップクラスの空港会社が誕生する。成田と羽田の一体経営を実現させるためには、成田国際空港株式会社が日本空港ビルデングと持ち株会社を形成し、羽田の土地と空港基本施設を政府から買い上げるなどの施策が考えられる。同時に課題となるのが、約20の国が管理する空港の地方への移管と、これら地方空港の商業施設を運営するターミナルビル会社と空港との一体化であり、議論が必要となろう。

海外の大都市圏空港の経営(運営)主体図
海外の大都市圏空港の経営(運営)主体図

(※1)乗り換え時の割引サービス

(※2)航空機が空港への離着陸のたびに、当該空港の滑走路を使用することができる発着枠のこと。

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