欧州ETF市場は流行に敏感?
2008年03月12日
欧州のETF(上場投資信託)市場はここ数年で急成長を遂げた。契機となったのは、2000年4月にドイツ取引所がETFの電子取引市場であるXTFを開設したことである。それから8年足らずでXTFで取引されるETFは300を超え、08年1月の売買高は144億ユーロに達した。 XTFの特徴はその多様な商品のラインアップにあると言える。ちなみに直近(07年12月)のパフォーマンス上位にはインド、ロシア、東欧の株価指数に連動するETFと、グローバル・クリーン・エネルギー指数に連動するETFが並んでいる。無論、最初から多様な商品がそろっていたわけではない。むしろ、その時その時の人気の高い商品をどんどん取り入れてきた結果である。XTFは、初めは「ダウ・ジョーンズSTOXX50」と「ダウ・ジョーンズ・ユーロSTOXX50」といったブルーチップ指数に連動するETFからスタートしたが、その後はセクター別指数、主要国の株価指数、さらに債券指数と対象を拡大させた。05年からは投資テーマ別(バリュー、グロース、スモールキャップ、配当重視など)指数に連動したETFが登場。米国のナスダック100指数連動型のETFの取引開始も05年である。06年にはエマージング諸国を投資対象とするETFが急増し、最近では商品指数に連動するETFが増加している。 ETFの特徴といえば、株価指数に連動する投資信託を取引時間中ならいつでもリアルタイムに売買することができ、しかも取引コストが安いということである。この特性がまずは個人投資家に歓迎された。やがて市場規模が拡大し、また取引されるETFが多様になるにつれ、機関投資家もETFをより重要な投資対象としてとらえるようになっている。なお、投資家の利便性向上を目的に02年にはユーレックス(※1)で、売買高の大きいETF(ドイツのDAX、およびダウ・ジョーンズSTOXX50とダウ・ジョーンズ・ユーロSTOXX50)に関して、先物とオプション取引が開始された。 XTFの成功を他の取引所が見過ごすはずはなく、ETF市場を設け、その拡充に乗り出す取引所が増えている。07年12月の欧州ETF売買高シェアはXTFが34.8%で最大だが、これにユーロネクスト(※2)(31.0%)、イタリア取引所(13.0%)、ロンドン証券取引所(11.3%)、スイス取引所(5.1%)が続き、残りの4.8%をノルウェー、フィンランド、ハンガリーなどが分け合っている。売買高がほぼ右肩上がりで拡大してきている欧州のETF市場だが、例えば、XTFの売買高はドイツ取引所の株式売買高の5%に満たず、まだまだ成長余地は大きいと考えられる。次はどんな商品が登場するかで、欧州の投資流行が見て取れるはずである。 (※1)98年にドイツ取引所とスイス取引所の先物・オプション取引所を統合して設立された。もともと国債先物商品に強みを持っていたが、近年は株式派生商品の取引を拡充させている。 (※2)00年にフランス、オランダ、ベルギーの取引所が統合。02年にはポルトガル取引所とLIFFE(ロンドン国際金融先物オプション取引所)も傘下に入った。07年1月にニューヨーク証券取引所と合併し、NYSEユーロネクストとなっている。
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