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温暖化~柿と隅田川の花見

2008年02月28日

牧野 潤一

先日、タクシーに乗った。天気の話題から近頃の異常気象などに話が及んだ。「最近、柿を食べなくなりました」と運転手は言う。梨や桃もですねと私が話を付け足すと、「いや、柿なんですよ」と彼は言った。なるほどと思った。夏が長くなり、秋が短くなった。冬があっという間にやってくるので、柿を食べないのである。寒くなり過ぎてからは、柿は食べる気がしない。「でも、干し柿はよく食べるようになりました」という。干し柿は冬の食べ物である。

運転手は続ける。「今年は花見が大変です。場所取り担当なんで」。聞けば、場所取りが大変なのではなくて、開花予想が難しくなり、桜が早めに咲いてしまうので、ちょうど見頃の時期に場所を取るのが難しくなったというのである。

四季の移り変わりが昔と微妙にずれてきているようだ。

ここ2、3年、多くの科学者が、ある時点を過ぎると、気温の上昇を人為的に抑えるのが不可能になるポイントがあると言及するようになった。(航空用語の帰還不能地点という意味を借りて「ポイント・オブ・ノーリターン」などと呼ばれている) 東京大学山本良一教授によれば、ポイント・オブ・ノーリターンは、世界に壊滅的打撃を与える気温に達する時点よりも十年~数十年前に訪れるだろうと推定。平均気温が2℃上昇するのが、2028年とするとその10年前、2018年がポイント・オブ・ノーリターンということになるという。

北極の海氷は、昨年出されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第四次報告書に出された予想を上回るスピードで消滅していることが観測された。報告書では、2050年9月に海氷は450平方キロメートルまでに減少すると予測したが、これは、この報告書の発表後、わずか半年で達成されてしまった。43年後に起こると予測していたことが、わずか半年である。

 世界の平均気温が2℃上昇すると、水害、干ばつによる食料危機が起こり、数億、数十億の人間が犠牲になる。あるいは、アマゾンがサバンナに、グリーンランドの氷床の全面融解開始など、劇的な変動が起こると言われている。

ポイント・オブ・ノーリターンは予想以上に近いかもしれない。覆水盆に返らずである。

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