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大胆な景気対策が期待しづらい欧州経済

2008年02月21日

経済調査部 経済調査部長 山崎 加津子

欧州の景気見通しが視界不良となっている。昨年はユーロ圏が2.7%、イギリスは3.1%と高成長を記録した。そこから減速していることは確かなのだが、問題はその減速度合いである。ECB(欧州中央銀行)のトリシェ総裁は2月7日の金融政策委員会後の記者会見で、ユーロ圏経済の見通しに関して「かつてないほど不確実性が高い」とコメント。景気減速に対する懸念が高まり、金融政策の選択肢が1月までの「利上げか据え置きか」から、「据え置きか利下げか」に転換したことを示唆した。一方、既に昨年12月に利下げに転じたイングランド銀行(BoE)は、2月に追加利下げを決め、政策金利を5.25%に引き下げた。2月13日に公表したインフレーション・レポートで、BoEはイギリスの成長率が08年半ばにいったん前年比2%を割り込む可能性が高いとの見通しを示した。

欧州の景気減速にはサブプライム問題と米景気減速が大きく影を落としている。対米輸出はドル安進行もあって、既に昨年から低迷。さらに、サブプライム関連証券に投資した結果、バランスシートが劣化した欧州の銀行が、貸出基準の引き締めに動いている。住宅ローンの伸び率は減速傾向が明らかで、過去数年にわたって住宅ブームに沸いたイギリス、アイルランド、スペインで、住宅価格の伸び率鈍化や下落が進行。逆資産効果で消費減退が懸念されている。住宅ブームとは無縁であったドイツでは、原油や食品の価格上昇を原因とする物価上昇が消費者マインドを冷え込ませ、小売売上高は不振である。このような中、企業も消費者も先行きに対する期待感が大きく後退した。

金融市場では、景気減速に対処するために、ECBが速やかに利下げに転じ、BoEは大幅な追加利下げを実施することが期待されている。ところが、話はそう簡単ではない。というのもユーロ圏でもイギリスでもインフレ率が上振れする懸念が存在し、利下げ判断の際にこちらにも目配りをしなければならないためである。ユーロ圏では原材料高が製品価格に転嫁されること、また足下の消費者物価上昇が賃上げに反映され、より広範囲なインフレ上昇をもたらすことが懸念されている。一方、イギリスではポンド安による輸入物価上昇が生産者物価の急上昇につながっており、これが消費者物価に波及することが警戒されている。昨年末から兆候が見られる消費減速がさらに進めば、価格転嫁の可能性は限定されるはずである。しかし、欧州の受注統計は堅調な伸び。輸出も東欧、ロシア向けなどが高い伸びを続けている。年末に中国向け輸出が落ち込んだが、中国の統計では輸入が高水準で推移しているため、これは大型プラントや航空機といった金額の大きい輸出品が前年同月にあったことによる一過性の落ち込みと考えられる。銀行貸出も企業向けは前年比二桁の伸びで推移している。企業部門を中心になまじ持久力があり、じわじわと景気減速が進行すると予想される分、ECBとBoEの金融政策はタイミングが遅くなったり、小幅に留まったりする可能性が高い。大胆な景気刺激策を打ち出しにくいことが、なだらかな景気減速を長期化させる要因ともなろう。

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