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学校債発行と情報開示

2008年02月15日

内藤 武史

文部科学省は昨年10月、「有価証券発行学校法人の財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」を制定し、発行体の情報開示義務を以下のように提示した。

(1)一定の要件を満たす場合、投資家保護のため、学校債の募集主体に対して厳格な情報開示義務が課される。

(2)学校債の募集主体は有価証券届出書等の各種書類を作成し、内閣総理大臣に提出するとともに、公衆縦覧に供することが必要である。

(3)各種書類の中には、企業会計原則の考え方に基づいた財務諸表(計算書類)が含まれ、当該財務諸表は学校法人会基準に基づく計算書類とは別に作成することが必要である。

さらに、みなし有価証券としての学校債については、募集者が500名以上かつ募集額が1億円以上の場合、上記の開示義務が発生するとしている。文部科学省によると、学校法人7,884法人のうち、みなし有価証券としての学校債を発行する学校法人は26法人だが、平成19年9月29日以前に募集・売出した分については有価証券届出書は不要なことから、現状では開示義務が生ずる学校法人はゼロとなっている。

有価証券指定後の学校債発行について、昨年8月15日の本欄「学校債が有価証券指定へ」で筆者は「実際の発行にあたってはディスクロージャーの徹底が求められるが、そうした要求に耐え得るのかといった問題も指摘できる」とコメントしたが、杞憂が現実のものとなってきている。たとえば、同8月17日付日経金融新聞は「市場公募型の学校法人債の発行に前向きだった法政大学が、監査費用が現在の10倍以上になる可能性があり、発行は事実上困難となった」と報じている。監査費用もさることながら、学校法人の場合、従来の学校法人会計基準に則った計算書類に加え、有価証券届出書・有価証券報告書・半期報告書といった書類を新たに作成しなければならなくなることから、現在の学校法人会計基準に則った会計システムとは別に新たな会計システムを構築する必要が生じてくる。新たな会計システムの構築に要する費用は監査費用以上に巨額であると推測される。そもそも、自己資金構成比率が84.8%(平成18年度)ときわめて高い大学法人の場合、現状では学校債を積極的に発行する動機に乏しいことは否めない。ちなみに、平成18年度の学校債による調達額は659億円と私学事業団借入金4,469億円の七分の一程度にすぎない。

しかしながら、平成18年度の帰属収支差額は3,643億円、事業キャッシュ・フローは8,822億円と平成10年度以降でともに最低となるなど、大学法人の収支状況は確実に悪化してきている(下図)。こうした状況の中で、収入源の多様化を図るために学校債による資金調達を検討していく必要性は、国立大学法人債の発行が視野に入ってくることも相俟って、今後一段と高まってこよう。但し、先述のように新たな会計システムの構築に厖大な費用を要するとすれば、学校債発行が本格化する契機となるのは学校法人会計の抜本的改正の時期を待たねばならないかもしれない。

大学法人の帰属収支差額とキャッシュ・フロー

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