京都議定書の運用開始を迎えて

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2008年02月13日

  • 森田 伊生
京都議定書の本格運用が2008年から始まった。同議定書は、2008年から2012年までの「第一約束期間」において、日本やEU諸国等の先進各国に対して二酸化炭素、メタンおよび代替フロンなどの温室効果ガスの年平均排出量を1990年(一部ガスは95年)に比べて削減する義務を課している。日本(年度ベース)は、2012年度までの平均で基準年度比6%削減する義務を負っている。

環境省によると、2006年度の温室効果ガス排出量(速報)は、二酸化炭素換算で13.4億トン(基準年の合計を6.4%超過)となった。すなわち、目標達成のためには12.4%の排出量の削減が必要となる。2007年度は新潟県中越沖地震の影響で東京電力の原子力発電所の一部が操業を停止していることから、二酸化炭素の排出量が増加する可能性が高い。一部の産業においては、排出量の削減の取り組みは成果をあげているが、議定書の目標達成は厳しい。目標が達成できなかった場合、罰則の適用については未確定であるが、政府が目指す環境分野での国際的なイニシアチブの発揮は不可能となろう。

二度のオイルショックを経験した日本では、さらなる省エネにより排出量の削減を図ることは難しい。政府は、海外からの排出権の購入や森林の整備による温室効果ガスの吸収能力の向上により議定書の目標達成を目指す方針である。しかし、排出権取引の多用には批判があることに加え、森林の管理が十分でないことから、これらの政策だけでは目標達成は期待しづらい。化石燃料の代替としてバイオマス(生物由来資源)エネルギーの活用強化を目指しているが、食料生産の減少による価格高騰や新たな環境破壊などの弊害があることから、温暖化政策の中心とすることは現実的ではない。排出権を購入せざるを得ないとしても、その前に政府、企業および家計が排出量削減に向けた取り組みを強化する必要があろう。

本年7月に開催される北海道洞爺湖サミットにおいて、2013年以降の「ポスト京都議定書」の枠組みが議論される見込みである。米国や中国等温室効果ガスの大量排出国が参加していないことや、一部の国のみに過大な目標を課している京都議定書の教訓を踏まえて、多くの国が参加して実効性を伴った枠組みの策定を期待したい。新エネルギー開発など、温室効果ガスの排出量削減につながるような産業分野について、積極的な支援が求められよう。

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