ロシアの個人消費を支える豊富な財政

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2008年02月12日

  • 渡邊 眞
ロシア特に、首都モスクワやサンクトペテルブルグといった大都市は、いたるところでオフィスビル、高級マンションや工場が建設中である。需要に供給が追いつかない状況が続いており、モスクワ市内のマンションは1部屋1億円以上するもの散見される。また、オフィス賃貸料は世界でもトップクラスである。07年12月には中心地クレムリンから5キロほどにある自動車工場跡地(約24ha)を再開発し、高層オフィスビルを中核に高級ホテル、住宅棟、ショッピングセンターを日本の省エネ技術を活かして建設する大プロジェクト(総工費40億ドル)が発表された。

消費に目を転じると、モスクワ市内には高級車が溢れ、スイス製高級時計の輸入は07年に前年比+60%もの高成長を記録(金額ベース)、国別・地域別輸出先シェアで2%を超えるまでに成長した(日本は8%)。何もこうしたお金持ち向け消費だけではない。メトロ(独)などの外資系資本のみならず、国内資本による大型スーパーが先を競って出店され、そうしたスーパーを核としたショッピングセンター・モールが各地で見られる。

ロシアは原油高を背景とし7%を超える高成長を遂げているが、原油高は同時に財政に大きなゆとりを与えている。財政黒字の対GDP比率は6.5%に達し(07年推定)、不足しているインフラへの大規模投資や生活の質向上等に向けられている。政府の08年-10年の3ヵ年財政方針によると、公務員(約1,750万人、雇用人口の約26%)の平均月給は、05年に4,158ルーブルであったが07年9月に6,242ルーブル(約3万円)に引き上げられた(+50%)。08年9月、09年8月、10年1月にもインフレを考慮してさらに引き上げられる予定である。一般庶民の住宅取得にもエールを送っている。平均的な3人家族用54m2の住宅価格を年収の3.2倍にとどめる。また、住宅ローンに対する政府保証額を3年間で1,080億ルーブル設定、住宅ローン金利は07年の11%が09年には8%に低下すると想定し、ローンを通じた住宅取得を推進する意向である。ローン残高は07年の1,510億ルーブルから10年には3,150億ルーブルへと2倍以上となる見通しだ。

準備基金(旧安定化基金の一部)は1月末で1,250億ドル。原油価格が急落したとしても、財政は担保されている。好況及び政府の後押しによる可処分所得の増加、旺盛な住宅需要から見て、ロシアの消費ブームはまだ当分続きそうだ。

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