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アジア市場下落は行き過ぎ、底値拾いのチャンス到来

2008年01月30日

由井濱 宏一

08年のアジア市場は暴落でスタートした。ただ、今回のアジア市場の下落は先進国市場に必要以上につれ安となった可能性が高い。つまり、アジア市場(日本を除く)の現在の株価下落は行き過ぎである。 短期的には米国発の情報に敏感に反応し、変動性が高くなる可能性が大きいが、今後半年程度の投資期間を視野に入れれば、1月21~22日の下落で株価はほぼ底値に達したとみられる。

基本的にアジア株式市場に対するポジティブな見方を変えない理由としていくつか考えられる。まず、中国、香港を中心としてアジアのファンダメンタルズに大きなほころびは見えず、内需主導の健全な成長途上にある点だ。中国、香港の小売売上高は前年比10%以上の高い伸びとなっており、香港の失業率は引き続き下落傾向にある。米国金利の低下で香港域内の金利低下につながれば、実質金利は大幅に低下し、民間消費、投資に弾みがつきやすい。中国も足元で付加価値の高い耐久消費財の輸入が増加しており、人民元高も手伝って民間の購買力は強くなってきている。過剰流動性の根源である巨額の貿易黒字が減少に向かえば、積極的な金融引き締めスタンスにも変化がみられよう。一方、アジアからの輸出は依然として堅調である。12月の米国小売売上高は芳しくなかったが、韓国や台湾からの輸出は2桁の伸びを維持、アジアをはじめとする新興市場の力強い需要に支えられている。その意味で、株式市場とは別にファンダメンタルズ面では米国とのディカップリングが進行している可能性が高い。

2番目にアジア地域の株式市場は、特に00年以降、G7をはじめとする先進国景気動向よりも中国の景気動向により強く反応するようになってきている点である。MSCI Asia Pacific ex Japan(MSCI AP ex Japan)の株価動向とOECDが発表する景気先行指数(G7ベースと中国)の動きをみると、最近ではMSCI AP ex Japanと中国の同指数との連動が強くなっている。00年以降の相関をみると正の相関度合(+0.62)となっており、その前の期間(91年~99年)までの0.42から相関度合いが強まっている。ちなみに日本の場合は91年~99年で‐0.13で最近(00年以降)はやや高まっているとはいえ+0.32程度と他のアジア地域に比べて中国の成長の果実を十分取り込めていない可能性がある。中国が高成長モメンタムを維持する限り(その可能性は高いと思われるが)、それはアジア地域の株式市場にはポジティブに作用し続ける可能性がある。

3点目はバリュエーション調整の進展である。07年の後半は株価が急上昇したこともあって特に香港市場にはやや割高感が伴っていた。07年年末から08年年初の株価急落と米国長期金利(10年物国債利回り)の低下で、イールドスプレッド(益回り-長期債利回り)は急上昇している。投資家の悲観度が強まった結果リスクプレミアムは上昇し、割高感はほぼ解消されたと言ってよい。更に付け加えれば、MSCI AP ex Japanと他市場とでPEGを比較すると、アジア地域のみが相対的な高い長期予想増益率を受けて1を割り込んでおり、グローバル市場の中では魅力的な投資機会を提供しているといえよう。

これらの点を踏まえると、アジア市場の中でも、米国をはじめとするグローバル景気の落ち込みに対して比較的抵抗力が強い、香港市場上場の中国、香港株により注目していくべきであると考えている。ファクターとしてはやはり中国内需(民間消費、インフラ投資)の拡大、消費の質的変化から恩恵を受けやすい消費財(耐久消費財や小売りセクター)、大手不動産、インフラ関連(建設)、資源関連などの底値を丹念に拾っていくべきだろう。

 

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