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景気のリカップリングで強くなる2つの通貨

2008年01月28日

亀岡 裕次

およそ半年前までは、世界的な好況下で金利上昇に取り残された円に売りが集中していた。株高を背景に、円を借りて外貨建て資産へ投資する「円キャリー取引」が増え、円安が進んだ。その後、米サブプライム問題をきっかけに株価が下げ始めると、円キャリー取引は下火となり、その巻き戻しから円が買い戻されるようになった。07年末頃にかけて、売りの標的はドルに集中した。多くの国では利下げ期待に乏しく、中には利上げ期待の残る国があるなかで、米国の利下げ期待が際立って大きくなったからだ。ところが08年になると、今度は円だけでなくドルも買い戻され始め、売りの標的は円とドル以外の通貨に向き始めた。かつて「2弱」と言われた通貨が「2強」へと変化する兆しをみせている。

サブプライム問題による株安を受けて定例FOMCの1週間前に0.75%の緊急利下げを行った米国だが、ドルは全面安から脱しつつある。これは、景気減速懸念が米国だけの問題ではなくなろうとしているからだ。米国景気が下降しても新興国などの成長によって世界経済は上昇を続ける、という「デカップリング(非連動)」論は後退しつつある。少なくとも金融市場においては、米国だけでなく日本や欧州、そして新興国の株価までもが大幅に下落する世界同時株安が起き、デカップリングは崩れ始めている。また、信用収縮の動きは米国から欧州にも広がり始め、世界的に経済見通しは悪化方向にある。程度の差はあれ、各国の景気は米国の動向に「リカップリング(再連動)」しつつあるのだ。

金融市場や実体経済がデカップリングではなくリカップリングするのであれば、「円」と「ドル」の2通貨が強くなりやすい。米国だけでなく世界的にも経済が減速すると、株価はより下がりやすくなり、外貨建て資産を売って円を返済する「円キャリー取引の巻き戻し」による円相場の押し上げ効果が強まる。また、米国ではすでに景気悪化見通しや金利先安観が強くなっているが、他国では米国に遅れる形でこれから強くなっていきやすく、そのことはドルを買い戻す要因になる。リカップリングすると円とドルのどちらが強くなるかは一概に言えないが、日本の金利先安観が限定的なので、株安効果で円が強くなりやすいだろう。それはさておき、景気減速局面のリカップリングは、円とドルを台頭させる要因になることだけは間違いないのではなかろうか。

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