今年の経済見通し- デカップリングとリカップリング
2008年01月07日
過去を振り返ると、ねずみ年の日本株の上昇率は十二支の中で最も高く、またアメリカの経済成長率も過去60年ほどでは、ねずみ年が最も高いそうだ。株価、景気ともにねずみ年は良いめぐり合わせとなりそうだが、今年に限っては、サブプライム問題、アメリカの景気後退懸念と難題は多い。それらを乗り越える鍵は、やはり新興国の安定性ならびに昨年から大きなテーマとなっているデカップリング(非連動)の確度ということになるだろう。
年初からWTI原油先物価格は一時1バレル100ドルを突破し、さらに12月のアメリカの非農業部門雇用者数は、前月からわずか1万8000人の増加と、4年4ヶ月ぶりの低い水準にとどまった。景気が悪化すればインフレ率は低下し、中央銀行が利下げを行いやすくなるはずだが、原油価格高騰がインフレ率の低下を阻止するかもしれない。そうした連想から市場関係者の頭をよぎったのは、おそらくスタグフレーションの可能性であったろう。
ただしスタグフレーションが猛威を振るった70年代と80年代の初頭は、賃金とインフレ率のスパイラル的な上昇が発生していた。今日と過去との大きな差異は、新興国の台頭によるグローバル化が先進国の賃金上昇を抑制していることである。現在そのような状況にはなく、スタグフレーションの脅威は誇張されすぎていると思う。FRBは大幅な利下げを実施すると考えられ、ITバブル崩壊後と同じように、物価調整後の実質短期金利がゼロに接近する可能性もあるのではないか。
今年の世界経済を悲観的に見るシナリオは、景気後退に陥るアメリカ経済に新興国がデカップリングならぬリカップリングし、調整色を深めるというものだ。確かにアメリカが景気後退に陥る可能性はゼロではないが、過度の悲観は禁物だろう。むしろアメリカ経済の不調は、新興国の実力とデカップリング論の確からしさを浮かび上がらせることになるだろう。アメリカ経済の回復も、最終的には新興国の景気サイクルにアメリカがリカップリングする過去とは異なったパターンで実現するのではないかと予想している。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
中国:来年も消費拡大を最優先だが前途多難
さらに強化した積極的な財政政策・適度に緩和的な金融政策を継続
2025年12月12日
-
「責任ある積極財政」下で進む長期金利上昇・円安の背景と財政・金融政策への示唆
「低水準の政策金利見通し」「供給制約下での財政拡張」が円安促進
2025年12月11日
-
FOMC 3会合連続で0.25%の利下げを決定
2026年は合計0.25%ptの利下げ予想も、不確定要素は多い
2025年12月11日
-
大和のクリプトナビ No.5 2025年10月以降のビットコイン急落の背景
ピークから最大35%下落。相場を支えた主体の買い鈍化等が背景か
2025年12月10日
-
12月金融政策決定会合の注目点
2025年12月12日

