医薬品産業の活性化に政府や地方自治体の参画が求められる時代へ

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2007年12月28日

  • 竹内 慈実

世界最大の製薬企業である米ファイザー社が、日・米・欧にある工場や研究所の一部を閉鎖するなどして約1万人の従業員をリストラするという経営再編策を発表してから1年が経とうとしている。その間に、日本では来年3月に閉鎖予定の中央研究所に所属する社員約380人のうち、2割にあたる約80人が研究施設や新薬候補物質などの資産を譲り受けて新会社を設立するという新たな展開もみえてきた。

実は同様な動きは、米国ミシガン州にあるアンアーバー研究所(来年末までに閉鎖予定)でも起きている。日本では研究所に所属する社員らが中心となって新会社の設立準備を行っているのに対して、米国では、研究所が立地するミシガン州の自治体や有権者団体が中心となって地域ぐるみで新会社の設立準備が進められていることが報じられている。

過去にも、製薬企業の研究開発部門の一部がスピンオフした例はあった。だが、今回のように、閉鎖予定の研究所の医薬候補品のみならず、施設や設備なども新会社がほぼそのままの状態で継承するという事例はあまり例を見ない(アンバーバー研究所においては施設や設備の一部のみとなるもよう)。特に、米国アンアーバー研究所の例のように地元の団体や自治体が地域の経済開発の一環として新会社の設立を支援(企画・出資)するという試みは極めて珍しい。

大手製薬会社がR&D戦略として採ってきたブロックバスター戦略が転機を迎えている中、今後も研究開発体制を見直す企業は増えよう。医薬品産業の活性化には、一企業のみならず、政府や地方自治体の柔軟な参画も求められる時代へと変化している。

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