ニフティ・フィフティ相場の再来

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2007年12月11日

  • 成瀬 順也
米国株は乱高下を続けつつも、上昇トレンドは崩していない(今後も高値を更新する場面がある)と見ている。ただし、銘柄選別の動きは一層強まり、一部の好業績企業だけが株価バリュエーション無視で上昇する、いわば「ニフティ・フィフティ(Nifty Fifty)」的な相場展開が予想される。

ニフティ・フィフティとは、1970年代初めの米国で見られた少数優良銘柄中心の上昇相場である。直訳すると「素晴らしい50銘柄」ということになろうか。今から振り返ると、ポラロイド、Kマート、デジタル・エクイップメントといった懐かしい名前もあれば、コカ・コーラ、マクドナルド、GE、IBMといった現役のNYダウ銘柄も含まれている。

米国では「黄金の60年代」と呼ばれた高成長期を経て、内需が成熟化。一般に企業の成長力が鈍化した時期に当たる。その中で、ニフティ・フィフティ銘柄は新市場の開拓力、新製品の開発力に優れた企業群として、高成長の持続が期待された。いや、期待されただけでなく、実際に好業績を達成。資金の一極集中化により、高株価・高PERへと押し上げられた。バリュー(株価バリュエーション上の割安度)よりグロース(企業の成長性)、中小型より大型が好まれた時代である。

まさに、現在の米国株に見られる、二極化と選別物色に乗った一部銘柄の高値更新と似たような光景。BRICsなど新市場の開拓(大型グローバル企業)と、iPhone(アップル)や検索連動型広告(グーグル)など新製品の開発力が高く評価される展開は、まさにニフティ・フィフティ相場の再来と言えよう。

さて、ニフティ・フィフティ相場はどうやって終わったか。1973年から74年にかけてインフレが高進。金融引き締めにオイル・ショックが追い討ちをかけ、さすがのニフティ・フィフティ銘柄も成長率が鈍化。一時、市場の3倍以上となったPERも平均並みに鈍化したのである。今回も怖いのはインフレと金融引き締め。今は関係ないように見えるが、2008年は資源・エネルギー・食品価格の高騰がインフレをもたらさないか、チェックを怠れない。米国の株安を懸念すべきは「今」ではなく「来年後半」か、早くても「春以降」だろう。

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