サブプライム問題が解決するには?

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2007年09月20日

  • 亀岡 裕次

サブプライムローンの延滞率が明確に上昇し始めたのは、05年10-12月期だが、これはサブプライムローンの金利据え置き期間と関係している。サブプライムローンの多くは、当初2年ないしは3年程度は低い固定金利に据え置かれるが、その後通常のプライムローンよりも高い変動金利に跳ね上がる。サブプライムローンの貸出残高が急増し始めたのは03年10-12月期であり、その2年後に当たる05年10-12月期から金利負担が急増し、サブプライムローンの延滞が増え始めたというわけである。06年後半にローン延滞増がやや加速することとなったが、これには3年を金利据え置き期間とするサブプライムローンが影響している可能性もある。

米調査会社によると、米住宅ローン業者1744社の顧客の57%が8月に変動金利ローンの借り換えができなかったことがわかった。サブプライムローンの借り手は、もはや変動金利上昇を回避するプログラムが利用できなかったのだ。今後は次第に、金利据え置き期間明けを迎えるサブプライムローンの増加ペースは鈍化していくことにはなりそうだが、ローン残高が増え続けているため、ローン延滞率の上昇が止まるのは困難なのではなかろうか。サブプライムローンの残高推移から考えると、少なくとも08年末まではローン延滞率は下がりにくいだろう。

ブッシュ大統領は、サブプライムローンの借り手による金利の低い固定型ローンへの借り換えを促し、担保物件の差し押さえを防ぐ救済策を発表したが、抜本的な解決策になるとは考えにくい。住宅価格の下落が続いているからである。住宅価格の下落はローンの担保価値を低下させ、借り換えを困難にする。米政府が連邦住宅局の住宅ローン保証の拡充(サブプライムローン延滞者にも適用)や臨時減税措置を行っても、住宅価格の下落によるマイナス効果を埋めきれず、サブプライムローンの延滞や債務不履行が減らない可能性がある。

しかも、住宅価格の下落は、ホームエクイティローン(保有する住宅資産価値がローン残高を上回る部分を担保に行う借り入れ)の利用を減らしたり、逆資産効果を生んだりすることにより、個人消費の減退を招く要因となりうる。すでにホームエクイティローンの伸びは大きく鈍化しており、このまま住宅価格の下落が続くと、ローンは減少に転じる可能性がある。主要10都市の住宅価格(前年比)は、最近のペースで下落が続くと91年4月の▲6.3%に匹敵することになる。株価までもが下落すると、逆資産効果によって90~91年のように消費者マインドが大幅に悪化することもありうる。

したがって、住宅価格の下落が終息に向かうことが、サブプライムローン問題の拡大や景気悪化をくい止めるために欠かせないだろう。FRBの金融緩和によって住宅需要を刺激し、緩和している住宅需給を均衡化させる必要があろう。

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