金融商品取引法がファンドに与える影響
2007年09月14日
金融商品取引法が今月末(9月30日)に施行される。これにより、既存のファンド業者は、内閣総理大臣への登録あるいは届出が必要となり(※1)、投資家の保護を目的とした広告規制、リスク情報の説明義務など厳しい行為規制を受けることとなる。さらに無登録営業には刑事罰を科せられる。
同法では、ファンド(集団投資スキーム)の持分につき、販売・勧誘行為(自己募集)を行っている場合、及び主として有価証券・デリバティブ取引への投資運用を行っている場合には、第二種金融取引業者としての登録または届出が必要となる。或いはファンド形態による投資運用を行っている場合には投資運用業としての登録が必要となる(※2)。さらに、金融庁は、ファンド業者も含めた監督指針を作成済であり、現在、証券取引等監視委員会は今月末施行を予定にファンド業者も含む「金融商品取引業者等検査マニュアル」の作成も進めており、その対応が必要となる。ましてや上場会社ともなれば、日本版SOX法と呼ばれる内部統制報告書制度への対応も必要となり、費用負担が重くなる。
上記の「登録」の方が行為規制は厳格となるため、届出のみで済ますファンドが多い模様であるが、日本のプライベート・エクイティ最大手のJAFCOは、これを逆手に取って登録業者になることを、2007年3月期の決算説明資料において表明した。同社は、広範な投資対象をカバーする業者規制・開示規制の整備を求める金融商品取引法がファンド業界再編のトリガーになるとし、金融商品取引法で規律ある組織と業務の確立に対応できないファンド運用業者は選別・淘汰されることを想定している。さらに、ファンドの事業環境は、米国のサブプライムローン問題に端を発して、運用パフォーマンスのボラティリティが高まると同時に、資金調達面においても、調達コストの上昇あるいは資金調達自体が困難な場面に陥っており、収益的に予断を許さない状況が続いていることから、JAFCOの想定も現実味を帯びてきたことは否定できない。
(※1)なお既に投信あるいは投資顧問等の免許を取得済の業者は不要。海外では、米国が既に日本と同じく集団投資スキームについては登録制を取っており、来月(10月)からはドイツ、フランスでも登録制になる模様。英国は認可制となっている。
(※2)但し、施行日に適格機関投資家等特例業務に該当する場合にかかる投資運用業のみの場合には施行日から3ヶ月以内の届出で済む。
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金融調査部
主席研究員 内野 逸勢