サブプライム・ショック後の商品市況 ~資金需給VS資源需給~

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2007年09月11日

  • 山田 雪乃

7月半ば以降、米国のサブプライム・ローン問題に端を発する信用不安が、原油や非鉄などの資源市場へも波及した。しかし、商品によってその反応には温度差があり、非鉄金属の調整が最も大きくなった。次いで、原油(WTI)価格も一時的に調整したが、市場調整の渦中にあった8月1日に約1年ぶりの高値更新(場中に78.77米セント)を達成している。

さらに、穀物市場では、市場調整を横目に小麦価格が高値を更新中だ。小麦価格(12月限)は9月10日に8.72米ドル/ブッシェルへ上昇し、7月25日以降9月10日までの上昇率は約38%にのぼった。

元来、資源価格は【資源需給】に基づいて決定されるものである。そのため、資源価格と金融市場との間に明確な相関関係は形成されないはずだ。実際、90年代以降2007年8月末までの期間で、資源価格と米国株の相関係数を算出すると、両者に際立って高い正の相関関係は見られず、計測期間平均で0.2程度、相関性が高まった局面だけ部分的に取り出しても0.5に満たない。

ただし、近年、資源価格の形成に対する【資金需給】の影響力が高まっていることも事実である。この点を踏まえて、個別商品の金融市場への感応度を見るために、敢えて個別商品の特徴をあげると、亜鉛やニッケルを始めとした非鉄金属価格(01~06年頃)や金価格(04年以降)は、米国株と正の相関性が高めである。一方、小麦や大豆などの穀物価格はほぼニュートラル、原油価格は逆相関性が高めとなっている。

今後の商品市況を考える上で、このような【資金需給】と【資源需給】が個別の資源価格へ与える影響度を測っていく必要性があるだろう。前者については米国市場の展望、後者については中国の需要や在庫変動がカギとなって来よう。

秋口にかけての資源市場を見通すと、価格決定要因としての比重が、【資金需給】と【資源需給】の間を行ったり来たりし、不安定な相場展開に終始しよう。サブプライム・ローン問題を巡る不透明感は完全に払拭されたわけではないため、米国市場は金融機関の決算発表などをきっかけに、再び不透明感の高まると予想される。このような局面では、【資源需給】による価格決定力が大きい穀物市場のボラティリティは低めになると予想される。

しかし、その後年末年始にかけては、市場の不透明感が次第に払拭され、より【資源需給】への注目度が高まってくると予想している。季節的に資源需要が増加しやすい局面に入ること(冬場の暖房需要やクリスマス向け製品需要の増加、中国の旧正月前の在庫積み増しなど)から、需給逼迫感が強まってくることも影響し、資源市場の回復基調が強まってくるだろう。このような局面では、それまで【資源需給】要因が軽視される一方で【資金需給】要因によって価格調整した商品に上昇余地が大きくなりやすい。このような観点から、銅やウランの動向に注目している。

07年7/25~8/17の騰落率(%)

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