電子マネーを用いた少額決済サービスは普及期へ

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2007年08月16日

  • 田﨑 昭夫
電子マネー(※1)を用いた少額決済サービスが「Edy」と「Suica」を中心に普及している。発行枚数と利用可能店舗数は、Edyが2007年7月現在で3,100万枚以上(Edy機能が搭載された携帯電話を含む)と約59,000店、Suicaが07年4月現在で2,000万枚以上と約12,700店である。電子マネーの決済端末であるリーダライタの設置は、大手コンビニエンスストアやスーパーなどを中心に進んでいる。

近年の動向としては、リーダライタを共通化する動きや、小売り大手が電子マネーに参入する動きが見られている。06年9月には、東日本旅客鉄道(JR東日本)とNTTドコモが開発を進めている共通リーダライタなどをジェーシービー(JCB)とビットワレットが利用することで合意している。同時期にNECでも複数の電子決済サービスに対応したリーダライタシステムを開発すると公表している。また、小売り大手の電子マネーは、07年4月からセブン&アイ・ホールディングスの「nanaco」とイオンの「WAON」の発行が開始されている。

国内クレジット決済総額に比べて、電子マネーによる少額決済総額はまだまだ小さい。日本クレジット産業協会によれば、国内ショッピングにおけるクレジットカード決済総額は05年推計で約32兆円である。一方、電子マネーによる少額決済総額は06年で2,000億円弱などと言われている。電子マネーの一層の普及にはリーダライタの設置と、共通化が進むことが必要である。利用者と店舗側にメリットはある。利用者のメリットは小銭を持たずに買い物ができることや、サインレスで素早く買い物ができることなどである。また、店舗などでの利用金額に対して、電子マネーなどに交換できるポイントが付与されることもメリットであろう。

一方、店舗側は、リーダライタを設置し共通化を進めることで、こうした電子マネー利用者を店舗に呼び込むことができる。決済時間が短くなれば、店員数の削減やレジの待ち時間短縮による顧客満足度の向上などのメリットもある。クレジット連動型の電子マネーの場合、利用者の利用金額の上限が高いため、客単価の向上による売り上げ寄与が見込めよう。

店舗側にはデメリットもある。店舗側は電子マネーの発行会社に売り上げの数パーセントを手数料として支払う必要があることや、リーダライタを購入またはリースする必要があることである。ただし、過去において、手数料を支払う必要があった中、クレジットカードの読み取り機の設置が進んだこと、複数あるクレジットカードに対応して読み取り機が共通化していったことから、リーダライタの設置と共通化が進むという流れは自然であろう。今後も電子マネーの利用者、利用金額は増加していこう。

(※1) 電子マネーとは、電子的なデータに貨幣の価値を持たせたものである。国内では、ICチップに貨幣価値データを記録する電子マネーが普及しており、前払い方式と後払い方式で大別される。前払い方式の代表例がビットワレットの「Edy」と東日本旅客鉄道(JR東日本)の「Suica」。後払い方式の代表例が三井住友カードとNTTドコモの「iD」や三菱UFJニコスの「Smartplus」、ジェーシービー(JCB)の「QUICPay」などである。いずれの電子マネーもソニーの開発した非接触ICカード技術「FeliCa」を用いている。ただし、各電子マネーの規格間に互換性は無く、規格ごとに異なる決済端末(リーダライタ)が用いられることが多い。

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