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3時間待ちの3分治療

2007年08月03日

齋藤 哲史

日本の医療に対する批判の1つに、『3時間待ちの3分治療』がある。長時間待たせたあげく、わずか数分で治療が終わってしまうという意味だ。実際のところ、診療時間はともかくとして、待ち時間の長さを不満に思う患者は多い。しかし、これにあてはまるのは大抵の場合、大病院だけであり、中小病院や診療所については、ほとんど該当しないといってよいだろう。これは日本人の大病院志向に加えて、医療機関を自由に選択(フリーアクセス)できるという要素が大きい。

これに対して、欧米には『3時間待ちの3分治療』など存在しないといわれるが、その理由は、基本的にフリーアクセスが認められていないからである。つまり、受診するには、予約が必要ということだ。これにより、診療当日の待ち時間は短縮されるが、その代わり当日中に受診できるとは限らず、通常数日から1週間は待たされることになる。ただし、これはあくまで診療所の場合である。病院については、救急医療を除いて患者の自己判断による通院を認めていない国が多く、診療所の医師が病院での治療の必要性を認めて始めて受診が可能となるため(ゲートキーパー制)、待ち時間が数ヶ月にわたることもある。このように欧米で『3時間待ちの3分治療』が見られないのは、日本と制度が異なるからであり、実際には、「長時間待ってもその日のうちに受診できる」のか、それとも、「数日間待たされるが診療当日には待たなくすむ」かの違いにすぎないのである。

とはいえ、日本の大病院での待ち時間の長さが問題なのは確かであり、何らかの対策は必要である。それには、大病院における自己負担の大幅増か、欧米と同じゲートキーパー制の2つが選択肢としてあげられよう。

1つ目の自己負担の大幅増(※1)は、患者を大病院から中小病院もしくは診療所にシフトさせるので、大きな効果が期待できるのだが、これについては「貧富の差によって受けられる医療が異なる」、「金持ち優遇」等の反発が予想されることから、現時点での導入は困難といわざるを得ない。

2つ目のゲートキーパー制だが、こちらのほうが自己負担増よりは現実的な選択といえよう。そもそも、病院とは高度医療を提供する場であって、軽症患者が来院する所ではない。日本の大病院が混雑しているのは、軽症患者の来院を認めているからであり、これらの患者を診療所に振り分けることができれば、この問題は速やかに解決しよう。これは、大病院での治療を真に必要とする患者のためにもなるし、勤務医の過酷な労働環境の改善にもつながる。だからこそ、合理的な欧米人は、この制度を採用しているのであろう。ちなみに、大病院を増やすという選択肢もないわけではないが、日本の財政事情を考えると現実的とはいえまい。

(※1)紹介状なしで200床以上の病院を受診した患者は、初診料以外に「選定療養」というかたちで追加負担を求められるが(保険外併用療養費制度という)、その額は1,000~5,000円の範囲に抑えられているため、受診抑制の切り札とはなっていない。

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